第三十七回 残る傷。語る胸の傷。


 ……傷。


 ……傷は、僕に語りかける。



 僕は知っていたけど、

 語ろうとしなかった。


 それはきっと、

 そこに触れることが、


 ……怖いだけだった。



 胸の傷。それも小さなものではなく、

 きっと、一生残る傷。


 それでも隠すことなく、一糸まとわぬ姿。



 堂々と、今日もキャンバスに向かう。


 小さいけど、大きいの。

 体よりも心は何万倍も。


 広大な世界観を感じる。

 想像を遥かに超えながら……



 いつも笑顔で、

 今日も笑顔で、涙を見せないあなた。


 胸の傷は、

 今を生きている証……と語っていた。


 手術の痕だけれど、大きな手術……命に係わる手術。


 病気の宿命だけど、僕も令子れいこ先生のように勇敢に乗り越え、感謝できるのかな?



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