第三十四回 そして迎える、夏休みの活動。


 これまでとは違う体験。



 ――学園の中庭。


 草の香りと、大樹……


 そよぐ風と、

 蝉しぐれと、……命を感じるの。



 僕とは違う息遣い。


 僕の乗る車椅子を押して、

 令子れいこ先生は、芸術棟へ向かうの。



 車椅子から、もっと近くに……

 百号のキャンバスの近くに……


 絵の具のヌルッとした感じも、

 その匂いも、温度も、


 素肌で感じたい、令子先生みたいに。



 だから、今日この時、

 僕はすべてを脱いだ。


 主に着色になるけど、ただの着色ではないの。


 可能な限り……でも、限られるけど、

 体でも描く。


 令子先生は筆とは限らず、体も使うから。


 ……僕は好きになる。


 絵を描くことが、大好きになっていくの。



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