第11話素顔バレ

「それじゃあ早速行くから付いてきて」


 小高からの逃走に失敗した俺は、無理やり駅近のデパートへと連行されてしまう。

 なんであのまま俺の家に帰してくれなかったんだよ。そんなに荷物持ちが欲しかったのかよ。もうこのまま帰ってやろうかな……。

 なんてことを考えるが、そんなことをしたら明日からの学校生活に支障をきたしてしまう。まあもう取り返しのつかないぐらい支障が出ているのだが、それでも今よりひどくなる可能性がある。だから今日のところは穏便に、揉め事を起こさないようにしよう……。

 そうこうしているうちに、デパートの中へと入る。ここいらでは一番大きなデパートで、品揃えも豊富で買い物には適した場所だ。小高はすでに行く場所を決めていたのか、俺には何も言わずにズカズカと先に進んでいってしまう。

 その後を追いかけるように俺も後に続く。後を追いかけていくと、まず初めに小高は化粧品売り場に入った。その間、俺はぼーっと小高が出てくるのを待ち続ける。ほんと、俺はこんなところで何してんだろ……。虚しい気持ちになりつつ、俺は小高の買い物が終わるのを待っていた。それから十数分後くらいに、買い物を終えた小高が戻ってきた。

 女子の買い物というのはどうしてこう長いのだろう。あらかじめ行く場所を決めていたなら、買うものも決めとけよと思ってしまう。俺はぐいっと背伸びをすると、小高がこっちにきて。


「はいコレ」


 とだけ言って俺に渡してきた。どうやら「持て」と言っているらしい。つくづくムカつくやつだな。どうしてこんなのに友達がいるんだ? もしかしたら俺の知らないだけで、本当はすごくいいやつなのか? 

 そんなことを思い、俺は暇つぶし程度に小高めぐみのいいところを見つけてみようと小高を観察していた。しかし一向に見つからない。不思議なもので、嫌いな人間をいくら観察したところで嫌な部分しか見つからない。一度でもあらが見つかってしまうと、とことん粗探しをしてしまう。

 今も俺のこと奴隷のように扱ってるのがムカつくし、荷物持ちさせてるくせにお礼の一つもないし、自己中だし、本当に人間のクズな部分を全て合わせたようなやつだ。そもそもなんで俺に拒否権がないんだ? それにコイツのためにわざわざ気を使っている自分にも腹が立ってきた。小高とデパートに来てからもう1時間以上。

 洋服屋から出てきた小高は何も言わずに下りのエスカレーターに乗り一階に向かった。そのあとを何も言わずについていく。小高は一階に着くとデパートの出口の方へと向かっていく。もう帰るのか……。

 俺は心の中で安堵する。何事もなく穏便に終わらせることができた。まあ俺の心の中は憎悪とか嫌悪とか怒りとかの負の感情であふれているため、穏やかとは言い切れないが……。

 だがその感情を抑えつつ、なんとか乗り切ることができた。デパートの出口を抜けると、小高はクルッとこちらに振り向いてくる。なんだ? もしかして今日、買い物に付き合ったお礼を言って来るのか? 

 まあ流石にこんだけのことを俺にしたんだ。お礼の一つや二つあって当然。むしろしてこないのは論外。なんて思っていたが、コイツはあの小高めぐみだ。お礼なんてするはずもなく、むしろそれ以上に俺の癪に障ることを言ってくるような人間だ。小高はさげすんだような表情をすると。


「早くその手に持ってる荷物渡してくんない? ばっちいから。あとさ、あんたとうちが一緒に買い物に出かけた証拠友達に見せるから写メとるわ」


 なんて言葉をかけてきた。その言葉で俺の中にある何かがプチンと切れる音がした。もう我慢の限界だ。言いたいこと全部言ってやる。そういえばコイツ、極度の面食めんくいだったよな……。だったらもう後のことは知らない。ここでコイツに今日の文句を言わないと気が済まない。


「っせぇ……」


「は? なに?」


 俺は手に持っていた小高の買い物袋を地面に落とすと、両手でカツラと眼鏡を取り。


「うるせぇバーカ! なんで俺がお前みたいな自己中くそ女に付き合ってやんなきゃいけないんだよ? しかもお礼の一つも言えないとかどんな教育されたの? 常識なさすぎなんだよ! お前みたいな常識も礼儀もないくそ女見てると吐き気がする!」


 はぁはぁっと息を切らして言いたいことを言ってやる。そこで俺は気持ちが落ち着き冷静になる。どうしてこんなことをしてしまったのか……。普段ならこんな感情的になんてならないのに……。

 それもこれも小高が悪い。朝から溜まりに溜まったストレスが、小高の発言によって解放されてしまったから。俺にそんなことを言われた小高は唖然あぜんとしていた。


「え……ちょ……え?」


 驚きすぎて、言語能力が失われていた。最悪だ。とりあえず今俺のすべき最適の行動は……。考えた末、俺はその場を逃げることにした。幸いもう暗いし、俺の顔はよく見えてなかったはず。明日になったら小高が「あのインキャ急にキレてきてまじキモかったんですけどー」みたいなことを言いふらすだけでとどまるかもしれない。


「はぁ、はぁ」


 俺は走って駐輪場に向かう。つくづく今日は厄日だ。もう学校やめたい! そんな悲痛な叫びを心の中で叫ぶ。


































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る