どこまでも変わらずに
悪意はいたるところに転がっている。目に入れたくなくても、耳に入れたくなくても、どこからともなくやってきて、私の心を蝕んでいく。
「あの子、いつもぼっちでつまらなくないのかな」
そう言ったのは私の友達。
「気になるんだったら話しかけてあげれば良いじゃん」
くすくすと笑いながら言ったのは、もう一人の友達。
「えー、やだよー」
嫌なら話題になんてしなければ良いのに。そう思いながら私は愛想笑いをする。
放課後、たまたま「ぼっち」と言われた子と二人きりになった。その子は眼鏡をかけていて、髪の毛を染めてもいないし化粧もしていない。化粧どころか、眉の手入れもしていないだろう。そのせいでどこか野暮ったい印象だけど、可愛くないわけではない。私の友達たちは彼女を「ぼっち」と言ったけれど、おそらく彼女はわざとそうしているんだと思う。今も教室で私と二人きりだというのに、私に見向きもせずに課題を黙々とこなしている。
「今日の昼休み、私のこと話してたでしょ?」
私も彼女と同じように課題をやっていたけれど、二人きりの空間が気まずくて終わっていないけど帰ろうと身支度をしていると、彼女が唐突に口を開いた。
「なんのこと?」
本当に分からなかったわけではない。だけど、話しかけられるなんて思っていなかったから、私は答えを持ち合わせていなかった。
「全部聞こえてたよ」
彼女は私を見下すように鼻で笑った。
「そう」
なにか言い返したかったけど、私にはそれしか言えなかった。
「ぼっちでもつまらなくないって、あなたのお友達に言っておいて」
彼女はそう言うと、テキストとノートを手早く片付けてカバンにしまった。
「あなた、まだ終わってないんでしょ?私は終わって帰るから教室はあなたに譲るわ」
そう言うと、彼女は立ち上がって教室から出ていった。ぴしゃりと教室の扉の閉まる音。私はなんだか悔しくて泣きそうになった。
窓の外はまだ明るい。夕焼け空が見えるまで、まだあと一時間はあるだろう。校庭では運動部の人たちが駆け回っている。あの中の何人の人たちが、この学校を卒業してからも連絡を取り合うのだろうか。私はおそらく今の友達たちと学校を卒業したら連絡を取り合うことはないだろう。だけど、そうだったとしても、たぶん私は彼女たちと同じような人をまた見つけるのだろう。
一人教室に取り残された私は、未来の私に想いを馳せてため息をついた。
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