ウィオラの旅日記
御鏡 鏡
第一部 置手紙
プロローグ
私の師匠は年のころは七十台くらいに見えるが、引き締まった肉体をしており鍛錬を欠かさないヒトであった。
年相応には見えなかったのだ、それに卓越した知力や観察眼を持ち洞察力や推理力まで持っている稀有なお方であった。
白髪ながら眉目秀麗、眼光は鋭いが普段は優しい瞳であった。
学校には行かなかったが、学校に行くのと同様なことを修行の合間に色々教えてもらえたのだ。
だがその関係が終わろうとしていることが、私には分からなかった。
それは突然だった、誰かが転移してきたのだ。
転移の兆候は私にはつかめなかったが、師匠が髭を揺らし立ち上がったことで分かった。
それくらいの気配察知能力は、私にもある。
新たに街道のほうに、誰かの気配がしたからである。
丁度街道の端に作られた休憩所で、休憩中だったのだ。
休憩所には、様々な冬季と夏季の中間に咲く花が咲いていた。
師匠が新たに沸いた気配のほうへ、向かった。
私は師匠から、静止のサインと瞑想を続行のサインをいただいたので立ち上がらなかっただけであった。
その場から、静かに気配をうかがうことにした。
「冒険者ギルドからの使者です。老師、お願いしたいことがあり参りました」とその気配は大きな声で挨拶をしたようだった。
お願いしたいことか、何だろう……と思っていると。
「面倒を見て欲しい者が出た、叩けば伸びる!」と大きな声がまた聞こえた。
そして、少し時間が経った三分ほどだろうか……。
そろそろ瞑想を解き立ち上がろうかと思った次の瞬間、二人の気配が忽然と消えたのであった。
そう、師匠の気配まで消えたのだ!
思わず師匠がこちらを試すために気配を絶っただけかと思い、異界魔法で
その場に存在していないことが、改めて分かっただけであった。
二人が立ち会っていたと、思おぼしき街道の隅の場所までいった。
その場に書置きと思しき、薄緑色のモノが一枚落ちていた。
それには、「わしゃ南に行く、来たければフレイニアまで来るがよい」と白い文字で焼き付けられてあるモノであった。
まだ温かい、そう思ってその書置きを握りしめた。
一瞬落胆するのかとも思ったが、『来たければ来るがよい』なんて書置きがあるのだ。
行くしかない、と思った。
その前に、しなければならないことがあった。
まずは、街に戻るのである。
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