第204話 花織の魔法レッスン③

「魔法が魔力と魔法陣で発動させるものだってことは分かった?」

「はい」

「それじゃ、魔法陣について少し詳しく話すね。魔法陣は発動させたい魔法の回路を円で囲ったものよ。ちなみに術式の原型でもあるわ」

「え? てことは術式は元々魔法陣だったんですか?」

「そうよ。今でこそ術式は魔法のサポートみたいなもので、拡張式なんて呼ばれたりもするけど、術式なんて概念がなかった当時は魔法を構成する大事なパーツの一つだったの」


 ……いや、考えてみれば当たり前ではあるか。プラグインだってプログラムの一種だ。


「魔法陣の円は限定空間を示しているの」

「限定空間?」

「魔法の回路を描いただけだと、魔力が上手く流れなくて不安定になるのよ。そこで回路を円で囲い魔力を内側に留めて回路にちゃんと魔力が流れるようにしたの」

「それで魔法“陣”なんですね」

「そう。実はこの魔法陣、一人の魔法少女による発明だと言われてるわ」

「魔法少女が発明した!?」

「始まりの魔法少女。彼女については情報が少ないけど……。オールドタイプって聞いたことあるでしょ?」

いにしえの魔法。ですよね?」

「その古の魔法こそが始まりの魔法よ。およそ千年前に現れた始まりの魔法少女が創り出したもの。ま、今使われてる始まりの魔法オールドタイプは現代風にアレンジされたものだけどね」

「え? ちょっと待ってください。ということは、魔法って天界が作ったんじゃないんですか!?」

「そうなの。今でこそ魔法は天界が管理してるけど、魔法少女が現れる前は魔法なんて概念自体がそもそも無かったのよ」


 なんてこった……。たった一人の魔法少女が魔法を創り出した? そんなことが可能なのか……。


「で、でも魔法少女って言うじゃないですか」

「当時は魔法少女とは呼ばれてなかったみたい。でも役割は今と変わらなかったようで、世界の調整を担ってたらしいわ」

「そうなんですか……。あれ? じゃあ天界はその魔法少女が発明した魔法をずっと解析してるってことですか? 千年も!?」

「正確には数百年になるけど、そうね。今ある魔法は言わば亜流なのよ」


 一人の天才が創り出した魔法から現代魔法が作られたのか……。コンピューターをゼロから一人で発明したようなものか? バケモノかよ。 


「さて、じゃあ次は魔法の杖を深堀りしよっか。魔法の杖は天界の発明品。これのおかげで魔法は一気にシステム化されたの」

「でも、魔法の杖に魔法陣をインプットするの大変じゃないですか?」

「確かにインプットするわ。でも、魔法陣をインプットするなんて言ってないよー?」


 引っ掛かったなー? とばかりにニヤニヤする。

 可愛いなチクショー。


「実は魔法の杖と同時に発明されたのが魔法文字なの。魔法の杖の画期的な点は、その魔法文字を組み合わせたプログラムの形でインプットできること。これで魔法陣が無くても魔法が使えるようになった。まさに魔法革命ね」

「魔法文字ってわりと新しいんですね。魔法文字を組み合わせるってことは、術式と同じなんですか?」

「鋭い! 魔法文字を使う点では同じよ。でも開発の順番は逆で、魔法をインプットするための魔法式が先。魔法の杖と同時に開発がスタートしたの」

「その、魔法式というのが魔法文字を組み合わせるプログラムですか?」

「その通り! そのあと、魔法をもっとこうしたい、ああしたいっていう要望に応える形で作られたのが術式よ。同じ魔法文字を使うのでも術式用はけっこう違うの。だから術式は魔法M少女G協会Aで作ったり調整できるけど、魔法は天界じゃないと作れない」


 なるほど、そんな事情と背景があったのか。

 優海さんは優しく分かりやすくだったが、花織さんはより詳しくマニアックに教えてくれる。俺個人は花織さんの解説のほうが好きだな。


「うーん……」

「どうしたんですか?」

「魔力制御について教えようと思ってたんだけど、このままだと歴史の勉強だけで終わっちゃいそうな気がして……」

「私は全然いいですよ、すごく興味深いし、花織さんのお話楽しくて好きです」

「そ、そう? ならもう少し話しちゃおうかなー!」


 技能試験での印象とだいぶ違うなぁ。あの時はすごく冷静な大人の女性ってイメージたったけど、こんなに明るい人だとは。

 ていうか、意外とテクノロジー好きそうだし、楓人としても話が合うんじゃないか?


「じゃあ魔法の杖について、もうちょっとだけ詳しく説明するね。始まりの魔法オールドタイプとして発明された魔法陣を解析してシステム化したのが魔法の杖。ここまではいい?」

「はい」

「それじゃあ、次は魔法をより深く理解するために魔法の杖の仕組みについて。魔法の杖に魔力を流すと、まずハート飾りに魔力が貯まる。ここで使いたい魔法に合わせた魔力量に調整するの」

「このハート飾りってそんな役割があったんですか……」

「そ。言うなれば電化製品の電源の役割ね」


 なるほど分かりやすい。家庭用コンセントから流れる電力を家電に必要な電圧、電流に調整する役割を持つのが電源だ。ハート飾りがそれに相当するわけか。


「ちなみ正式名称はブースターね」

「え? 電源にブースト機能も付いてるんですか?」

「そうなの。面白いでしょ? ていうか、かえでもけっこう詳しいじゃない」

「へ? いや、まあその、少しだけ。あはは……」


 わりと気が合うせいか、つい油断して地が出てしまうな……。


「魔法少女の魔力は、魔法の杖に流しただけだと魔法を発動させるのに出力が足りないことが多いのよ。だから魔法の杖でちょっとブーストしてあげるわけ」

「もしかして魔法陣にもブースト機能あったんですか?」

「魔法陣にはないわ。魔法陣は円による限定空間で魔力を溜めれたし、回路に魔力が流れるだけで良かったから。でも魔法の杖で発動させる魔法はより高度になって、より大きな出力が求められるようになった。だけど強い器を持つ魔法少女ばかりじゃない。そこで、全ての魔法少女が平等に魔法を使えるようにブースターが付けられたの」

「そうだったんですか、全然気にしてませんでした」

「ふふ、かえでは強い器と膨大な魔力があるからね」


 天界の波長に合わせたり、誰でも簡単に魔法を使えるようなシステムがあったり、魔法の杖は確かに天界の機密が詰まったテクノロジーの結晶かもな。


「次に羽について、これは体験したことあるんじゃないかな?」

「はい。強い魔法を使ったらバサバサ羽ばたきますよね」

「そう。これは強い魔法や連続使用でヒートアップした杖を冷やして、残ってる魔力を発散させるためのもの。空冷ファンみたいな役割ね」


 ひょっとして花織さん、PCに明るいな?


「なるほどー、どうせなら水冷式にすればいいのに」

「水冷式だと大きくなっちゃうし、もし漏れたら大変だし、空冷でも効果は十分あるからね」

「ちなみ花織さんのPCは空冷なんですか?」

「ううん、私のは水冷式よ。空冷だと強い負荷が掛かるとどうしてもCPUが90℃行っちゃうから。……って違うわよ!」


 ハッと我に返る花織さんは慌てて否定する。


「そうじゃなくて、あのね! だからその……」 

「とても生き生きと語ってましたよ」

「ごめん! ……やっちゃったなぁ」

「全然いいですよ。私もそういう話は興味あるので」

「そうなの!?」

「はい。一応アストラタでバイトしてたこともあるので」


 過去形になったのは理由がある。最初は三ツ矢女学院に通うつもり無かったから歩夢を誤魔化すために利用していたが、実際に通うことになり、三ツ矢女学院の生徒がバイトはマズいだろう。という話になったからだ。

 

「アストラタって、あのゲーム会社の!? すごーい! 今度見学に行かせて!」

「え?」

「そうだ! 私の家にも遊びに来て! 色々話しましょう!」

「あの……」

「そうと決まればレッスン早く終わらせないとね! がんばろうね!」

「は、はい……」


 あれ? ちょっととしただけなのに、なんだか墓穴を掘った気がするぞ……?



 To be continued→

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