SFの魅力の1つは、スケールの大きさだと思います。
数百・数千年先の未来であったり、地球から遠く離れた宇宙空間にポツンと浮かぶステーションであったり、普段の生活では決して見ることのない世界が広がります。
そんな桁違いの時間・空間の中で生まれる孤独は、日常で感じるそれとは違う味があるように思います。
この作品で感じる孤独は、舞台のスケールに比例して圧倒的であり、かつ絶望的です。
そんな恐ろしい孤独の中で、微かにもたらされる優しさはまさしく一筋の光のようでした。
ただ、その優しさは希望と呼ぶにはあまりに微かで、絶望を払うことはできません。
優しさはただ、絶望的な孤独 をありありと照らし出し、孤独はわずかな優しさを際立たせるのです。
この2つの競演を、読者は遠くで見ることしか出来ません。
この作品の主人公は、私達とは遠く隔たった時間と空間の中にいるのですから。