第5話 ようこそ異世界へ!エロで世界を救ってくれ!

「そう悲観するでない。…神は細部に宿る…それこそ下世話な猥談にすら真理は得られよう…。例えばそうだな…『気の強い女はアナルが弱い』という話が…」




「ブッ!ごほっごほっ…」


突然の聞きなれた下ネタにむせた




「?どうした、続けるぞ?そうそう『気の強い女はアナルが弱い』だったな。


これは元は戦乱の時代。前線に立つ女騎士が辱めを受けたことが由来でな。基本戦場に立つような女騎士は貴族の出だ。それは気が強かった。


基本引き連れた騎士が戦うのでな、女騎士は防御力重視で重装備だった。しかも敗走を想定して、特に背面の装甲がそれは頑強でな…。」




「そういった前提を知らん異種族との戦闘に敗れ哀れに捕まった女騎士は辱めを受けるのだ。


異種族はあまりに堅牢な背面の装甲にそれは困惑したそうで、そこまで入念に守る箇所は弱点に違いないと考えたわけだ。」




「他のものたちはそんな鎧でないし、女で、気が強い、特異な存在だ。


このようなものを捉えれば戦いが早期に集結する経験も積んでいたからな。


戦場に立って気が強く、背面の装甲が堅牢な女はとにかく狙われた。」




「そして弱点と考えられ、辱めを与えられるアナルは執拗に攻められた!


どんな女であろうとアナルは弱いが、貴族出の女だからな、アナルを責められた前後で態度の落差は凄まじかったそうだ…。」




「ここから異種族の戦の教訓として、『偉そうな女は尻を攻めろ』が生まれた。これが歴史を経るにつれ今の形に落ち着いたのだ。」




老人が遠い目して語る


当初あまりに唐突な下ネタに驚いたが、そこにはエロを冷静に見つめ、リスペクトし、理解しようとした積み重ねが感じられた


ただの変な老人ではなかった…。彼の語りに引き込まれていく。




「下ネタも元をたどれば教訓だったりするのだ…。


たかが下ネタ、されど下ネタ。


おぬしのエロへの探究心は、我が世界のエロを紐解き、我の知らぬおぬしの世界のエロと混ざりあって、爽やかなエロの風を吹かせてくれるだろうと期待しておるぞ。」




そうして老人はぼくの目を真っ直ぐみつめ、ぼくに言葉がしみ込むように優しく語りかけるのだ。




「エロ同人が原因で死んだり、死後の世界で勃起したり、短絡的なエロいことばかり考えているぼくにそんな…。ダン様のチートに一喜一憂したり、ぼくはまだまだ子供ですよ…。」




「そう卑下するでない。私の若い頃のようだな…長くなってしまうから端的に言うぞ。


死後衰えぬエロへの執着はおぬしの才能だ。


エロを探究する素質は充分備わっておる。」




「私は見たいぞ!


我が世界の生けるものが、今まで感じなかったエロに気付き、世界を新たに見つめなおす。


盲目のものが目を開いたような…まさに生まれ変わったような…。そんな祝福の時を迎える様を!」




老人のまなじりはどんどん下がり、ぼくを見つめるさまはさながら孫を見るおじいちゃんだ…


老人の語る未来にぼくも感化されていく




-----------エロは希望だ-----------


通学の電車で見かけたOLスーツの美人さんを思い出す。


ぴっちりしたヒップライン…。大人になれば毎日それを見ながら生きていくことができるだろう。


まだまだ死んだりできないな…




-----------エロは闇照らす光だ-----------


学校の英語の先生を思い出す。


普段は裸眼の先生がその日は眼鏡をかけていた。


天真爛漫な先生が一転して知的な印象になった衝撃。




眼鏡クイッとするしぐさに目を奪われ、先生の指が凄く綺麗だったことを初めて知った。


どれだけ自分は世界を見落としていただんだろう…




エロは力だ…快楽だ…愛だ…祝福だ…


胸に去来するエロい思い出と、それに付随するエロの本質


万物の根源は…エロだ…!


そうだ!エロは世界を救うんだ!




「ダン様!踏ん切りがつきました!まだ知らぬ異世界のエロをぼくは知りたい!そして、異世界のエロとぼくの世界のエロで、見果てぬ地平線の先を見たい!」




「そうか!ならばおぬしを歓迎しよう!わが異世界へ!」




荘厳な光に包まれ、意識がうっすらと遠のいてゆく…


老人の慈愛に満ちた笑みと「幸あらんことを!」の言葉を最後の記憶に


ぼくの意識は完全に途絶えたのだった




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「あっ、感極まった勢いであやつを転送してしまったが、≪(エロの)探究者≫の諸注意するの忘れてた…」




「『探究者』の職業補正ゆえ、実際のムフフな事態に至るには因果を捻じ曲げるレベルの困難があるのだ…」




「まっまぁ!しばらく内緒にしておこう。私の若い頃似ておるし。どうせ今のうちは女性免疫がないだろうし、そうそうムフフな事態には近づきまいて…」


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