第119話『四号戦車試乗会・2』


かの世界この世界:119


『四号戦車試乗会・2』語り手:タングリス        


   



 ベンチだけでは心もとないので手すりを付けることになった。


 言い出したのはユーリアだ。


 戦車と言うのは意外にグニャグニャなのだ。四号の場合、サスペンションが転輪二個に一つの割合で付いている。発進するときには後ろが沈み込み、停車の時には前が沈み込む。不整地を走る時にもトラック並みにグニャグニャ揺れる。サスのストロークは自動車の倍ほどもあるので、ベンチに座っただけでは振り落とされかねない。


 ユーリアは、思いつくと近所の鍛冶屋に言づけて一時間余りで作ってもらえることになった。


 我々乗員にも仕事はある。


 ベンチを付けるために、砲塔の後ろのゲペックカステン(物入れ)を外すのだ。他の乗員は早くから集まってきた子どもたちの相手をしてくれている。   


 子どもの相手が苦手なわたしはヤコブとコンビを組んでゲペックカステンの取り外しとベンチの据え付けだ。


「なかなか良い妹じゃないか、ユーリアは……」


 二個目のボルトを外しながら声を掛ける。


「ええ、自分も驚いています。あんな積極的に振る舞える子じゃありませんでした。遊びに行っても、いつも自分の後ろに隠れていて……港のクィーンが務まったり、陽気に酒の席で喋れるようなやつじゃありませんでした」


「それに、今度の件でもくったくがない。生贄になると言うのに、まるでクラス委員を引き受けるくらいの軽さだ」


「自分が動揺すれば、ヘルムのみんなが後ろめたくなりますから」


「そうだな、夕べはあれだけのどんちゃん騒ぎだったが、心底から喜んでいる者なんかいなかったぞ」


 夕べ、寝返った勢いでわたしの胸に手を落としたオヤジの顔が浮かんだ。朝になって目が合うと少年のように顔を赤くしていた。


「ユーリアが生贄になりにいくときは、反対されても付いていきます……」


「乗り掛かった舟だ、わたしたちも四号で追いかけるからな」


「いいえ、ここまでご一緒してくださっただけでも感激です」


「そう言うな」


「脱走同然の自分を庇ってくださって……その上甘えるわけには……」


「ちょっと硬いなあ」


「は、すみません」


「いや、ボルトのことだ」


「あ、荷重を均等にかけなければ、持ち上げます」


「すまん……よし、もうちょい」


「これで、どうですか」


「……よし、全部外したぞ」


「は、はい。では、ゲペックカステンを外します」


「呼吸を合わせてやらないと、こんなものでも怪我をするぞ。いくぞ……いち、に、さん!」




 ゴトンと音がしてゲペックカステンが外れた。




☆ ステータス


 HP:9500 MP:90 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・70 マップ:7 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高25000ギル)


 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)


 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)


 白魔法: ケイト(ケアルラ) 


 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士


 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 


 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児


 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 




 


 



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