第98話『伍長一人』
かの世界この世界:98
『伍長一人』語り手・タングリス
その場は笑って済ませた。
なんと言っても船出だ、不吉なことや不審なことは口すべきではない。
それに、わたし以外のメンバーもヤコブ伍長に気を許している。ロキとケイトには良い遊び相手、姫も三人が遊んでいるのを冷やかしたりチョッカイを出したりしている。お気に召している証拠だ。テルは渋い顔をしていたが、わたしの目配せで感じてくれたのだろう、いまは四人が遊んでいるのを黙って見てくれている。
伍長というのは下士官の最下級で実務に長けた者が多い。常に兵たちと日常を共にする兄貴分という感じだ。
今も、自分で作った知恵の輪やルービックキューブで盛り上げている。船旅の最初に克服しなければならないのは船酔いだ。
船酔いは船と海の揺れに三半規管が追い付かないことから起こる。防ぐには、その揺れを超えるものに意識を集中させることが肝要だ。昔から戦闘配置になると酔いが収まるのは知られたことだ。
まさか、船酔い対策に戦争をすることもできない。知恵の輪やルービックキューブに集中させるのは効果的だと思う。それも船酔いが発症する前に集中させなければ効果が無い。巧みに惹きつけているヤコブは部隊においても有用な存在になっている。
そうなのだ、わたしが笑って済ませたのは、軍人としての信頼感こそが基礎になっているのだ。
「今のうちに船内を把握しておこう」
テルに声をかけて上甲板に下りた。ちなみに普通に言う露天の甲板は最上甲板と呼ばれ最上甲板のすぐ下のところを上甲板と言う。上甲板に下りたところには船内の見取り図があって、船内の配置と乗船者の部屋割りが分かる。
テルも同じ思いだと見えて、船内配置図の前で立ち止まった。
「……これではよく分からんなあ」
「キャビンなら左舷の中甲板だが……ひょっとして、ヤコブの部隊か?」
「ああ、世話になっているからな、部隊長に挨拶はしておかなければならんだろう」
「……見あたらんなあ、歩兵部隊がほとんどで……衛生部隊が一個分隊……機甲科も乗っていないぞ」
整備部隊の下士官が単独で行動することなどあり得ない話なのだ……任務によっては機甲科の移動に伴って随伴させられることもあるが、その場合でも四五人の編成にはなるはずで、伍長一人がポツンと乗っていることなどあり得ない……。
☆ ステータス
HP:7000 MP:43 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)
装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)
白魔法: ケイト(ケアルラ)
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
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