第88話『ヒュルルルル……』    


かの世界この世界:88


『ヒュルルルル……』    






 

 往路が散々だったので山地に入ってからはみんなピリピリしっぱなしだ。


 峠を越えたりカーブを曲がるたびに緊張し、藪から小鳥が飛び出しては車載機銃を向け、夕陽の傾きで岩肌が照らされては「クリーチャー来襲!」と75ミリ砲を撃ちまくった。没する寸前の太陽が一瞬で雲を茜に染めた時など、メスシリンダーや融合体の出現と狼狽して、みんな有りっ丈の魔法攻撃を食らわしてしまった。おかげでみんなMPが乏しくなって、夜道を四号の前照灯を頼りに歩いてMPを回復させる始末だ。こんどペギーに会ったらエーテルを中心に補充しなければならないと思った。


 寝不足になりながら無辺街道にたどり着くと、人や車両の往来が乏しくなっていた。


 エーテルの補給をと財布を取り出していたのだが、ペギーの出店も取っ払われていた。


「あんたら……失礼しました大尉殿、どこの戦車隊ですか?」


 南下してきた軍用トラックに誰何された。ドライバーは輸送部隊の女軍曹で、面構えと体格に似合わない高い声でなければオッサンと間違うところだ。


「独立遊撃隊だ、ムヘン山地の警戒から戻ってきたところだ。あんたらは?」


「北で大規模な作戦行動が始まります、それで輸送車両は後方に戻しているんです。あと二三台来れば、それも終了です」


「作戦とは、クリーチャーの掃討戦か?」


「それもあります……それ以上は申せません」


「レジスタンスか」


「ノルデン鉄橋で装甲列車が擱座したことを受けてのことらしいです、北に向かわれるのでしたらお気を付けて」


「ああ、そうするよ」


「では、失礼します」


 軍曹は敬礼するとトラックを発進させた。助手席には工兵の操縦徽章を付けた一等兵が乗っているのが不思議だったが、尻を振りながら、かなりの高速でデコボコ道を遠ざかっていく。迅速かつ確実に戻るには一等兵の技量では心もとないのだろう。


 ヒュルルルル………かん高い音が降って来る!


「みんな車内へ! ハッチを閉めて!」


 叫ぶと、タングリスは四号を全速後退させた。




 ドッガーーーーーーーーーン!!




 つい今まで四号が居たところに大口径砲弾が着弾、車内の我々はもみくちゃになった!


「すまない町長、これから先は自力で戻ってくれ。我々はノルデンハーフェンを目指す、ローゼンシュタットに立ち寄る余裕もなし、同行してもらうには危険が大きすぎる」


「大丈夫さ、タングリス大尉。若いころはマラソンでならしたもんだし、エスナルの泉で十分回復したしな」


「ああ、じゃあ、水と二食分の食糧だけ持って行ってくれ」


「ありがとう、それじゃ、また平和になったら寄ってくれ。殿下、みなさん、ご無事で、失礼します!」


 町長は軽々と四号を下りると、西に向かって駆け出した。


「タングリス、くるぞ!」




 ヒュルルルル……




 着弾の前触れに、タングリスはアクセルを踏み込み四号をまっしぐらに北に向かって走らせた。




 


☆ ステータス


 HP:7000 MP:43 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)


 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)


 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)


 白魔法: ケイト(ケアルラ) 


 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士


 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 


 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児


 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 


 

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