第78話 『ポチの冒険・1』


かの世界この世界:78     


『ポチの冒険・1』    






 前にも言ったが、ムヘンは菱餅の形をしている。




 ムヘンブルグ城塞を出た我々は菱餅の頂点である北辺の港町ノルデンハーフェンを目指している。あたりまえに行けば三日ほどの行程なのだが、あちこち用事が出来てしまって二週間ほどになるというのに、いっこうにノルデンハーフェンには向かえない。


 いまは、ローゼンシュタットのミュンツァー町長の石化を解くために東のエスナルの泉に進路を取っている。


「こんな山道だとは思わなかったぞ……」


 ブリュンヒルデがキューポラの縁に突っ伏してしまった。


 操縦しているタングリスを除いた全員が半身をハッチから出している。


 つづら折れの山道は険しくて、四号戦車は、今までになくグニャグニャ揺れるのだ。


 戦車と言うのは鉄の塊で、走る感じはガタゴトという擬音が相応しく思われるが、じっさいはグニャグニャなのだ。


 トーションバーというサスペンションが効いていて、そのストロークは自動車の倍ほどもある。だから揺れると自動車の倍ほどに揺れ幅になって、おまけに窓が無いので、車内でじっとしていたら高い確率で酔ってしまう。


 万一、酔ってリバースしてしまうと悲惨なことになる。戦車の車内は複雑でリバースした反吐は回収が難しく臭いが立ち込めてしまう。ちなみに、戦車兵の第一のタブーは車内でオナラをすることだ。


 平気なのは、石化してしまったミュンツァー町長とシリンダーの幼生であるポチだけだ。


 てっきり一人ぼっちで町長の見張りと覚悟していたのに、みんなが車外に姿を見せたのでピョンピョン喜んでいる。


「あいて!」


 スパナを咥えたまま飛び跳ねるので、ロキの頭に当たってしまった。


「嬉しいのは分かるけど、もうちょっと大人しくしてろよ……」


 みんなグロッキーで遊んでもらえないポチは、ちょっと拗ねてしまう。




 カンカンカンカン!




 揺れたふりをして、砲塔をカンカン叩く。もし口が効けたら「遊んでよ! 遊んでよ!」と駄々をこねるところだろ。


「うるさい! 暗黒世界の奈落に沈めてしまうぞ!」


 ブリュンヒルデに叱られる。


 ブーーーー


 スパナを咥えたままうめき声をあげる。


「屁のような唸り声をあげるな」


 ウーーーーー!


「じゃかましいいいいい!」


 今度は、わたしが切れた。ポチはケイト、ロキ、ブリュンヒルデの顔を交互に見る。見ると言っても目は無いのだが、スリットの形や、けっこう変わる顔色?で、そのように思う。




 ムーーーッ!




 だれも相手にしてくれないポチは、一声強く唸ると、上空高く飛び上がってしまった。


「ポ、ポチーーー!」


 ボールほどのポチは、瞬くうちに見えなくなって、スパナだけが砲塔の天蓋に落ちてきた。




☆ ステータス


 HP:4000 MP:2000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・50 マップ:5 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高40000ギル)


 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)


 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)


 


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士


 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 


 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児


 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る