第66話『鉄橋閉鎖』


かの世界この世界:66     


『鉄橋閉鎖』   






 ノルデン鉄橋は閉鎖されてしまった。



 装甲列車が橋の上で立ち往生してしまったからだ。

 十二両連結のうしろ二両が手ひどく痛めつけられていた。タングリスの見積もりでは中破の状態で、本来なら連結を解除して健康な車両だけで帰還すべきであったらしい。指揮官の判断か上からの命令か、全車両を帰還させることになって、無理くり鉄橋を渡ろうとしたところ、不発弾か積載していた弾薬かが爆発して、うしろ二両はグチャグチャに壊れて鉄橋を塞いでしまった。


「とうぶん渡れんな」


 砲塔の上に地図を広げ、タングリスは腕を組んだ。各々のハッチからみんな出てきて覗き込む。


「ここはノルデン鉄橋の北岸の街でグスタフと言います。ここの軍施設で一泊する予定ですが、この騒ぎで混乱が予想されます。南下する旅行者や物資が増えるばかりです」


 丁寧な言葉遣い、ブリュンヒルデに決めさせようとしているのだ。


「ムー、今夜はベッドの上で寝たかったぞ」


「ベッドどころか……」


「わたしも……」


 むずかるブリュンヒルデにケイトも同意を示す。わたしは静かに目線を動かし――あっちを見ろ――と促した。


「なんか人が殺到してるぜ!」


 子どものロキの方が反応した。


「橋を渡ろうとしていた人たちがホテルや民宿に掛け合っているんだ」


 地図によると、グスタフは北岸沿いでは最大の街で、ムヘンブルグが開かれるまではムヘン開拓の最前線都市として発展したらしい。ブリュンヒルデも知っていて、ここで一休みしたかったという気持ちは良く分かる。


「ローゼンシュタットまで進もう」


 ブリュンヒルデは地図の斜め上を指した。


「そんなに北の町……街道からも離れてるしぃー」


「ここはバラが綺麗なことで有名なんだ、どうせなら楽しみを増やそうと思うんだけど?」


「賢明な判断と思います」


 ポーカーフェイスだけど、タングリスの目が少し穏やかになったような気がした。たぶん、ブリュンヒルデが自分で判断したことを喜んでいるんだと思う。ただの付き添いではなく、姫としてのブリュンヒルデを教育するつもりでもあるんだろう。


「ブリねえちゃん」


「ブリねえちゃん……?」


「あ、ブリュンヒルデねえちゃんだと長いかと思って」


「そうか、親しみを込めた呼び方なのだな」


 納得すると、三角になりかけた目を緩めるブリュンヒルデ。


「なんだ、ロキ?」


「バラならローゼだろ? たぶんバラの町って意味なんだろうけど、なんでローゼンで『ン』が入るの?」


「いい質問だ。ローゼというのは単数だ」


「タンスウ?」


「単数、一つのという意味になるから、やかましく言うと『ローゼシュタット』だと一本のバラの町ということになってしまう。ローゼンは複数形で、つまり、たくさんのバラのある町になる」


「そっか、バラいっぱいの町という意味なんだね!」


「そーだそーだ」


 タングリスの肩が微妙に揺すれたように見えた。


 どうやら、若干間違えているようだが、おおむね正解のようなので姫教育のために胸に収めようということのようだ。




 四号はグスタフのメインストリートを抜けて街道に進んだ。


 振り返ると、ノルデン鉄橋のあたりから、まだ黒煙が立ち上っていた。




 


☆ ステータス


 HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・35 マップ:4 金の針:20 所持金:500ギル(リポ払い残高80000ギル)


 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)


 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)


 


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士


 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 


 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児


 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 


 


 

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