第60話『Cアラーム』
かの世界この世界:60
『Cアラーム』
前にも言ったが、ムヘンは菱餅の形をしている。横に長い◇(菱形)と言ってもいい。
菱形の、ほぼ真ん中を東西に流れているのがムヘン川。
ムヘン川の真ん中と西の端に玉がぶら下がっている。
真ん中の大きいのが城塞都市ムヘンブルグ。西の小さいのが今朝まで居たブァイゼンハオス(孤児院)があるシュタインドルフ。
そのシュタインドルフとムヘンブルグを結ぶ川沿いの道を東に向かっている。ノルデン鉄橋を渡って北辺の港ノルデンハーフェンを目指しているからだ。
何事もなく進んで行けば、ノルデン鉄橋までは三日の行程だ。
二号戦車の倍ほどの広さのある四号戦車の車内だが定員五人のところを子どものロキを入れて六人が乗っている。
大きいと言っても戦車だ。長距離バスのように休憩用のベッドも無ければ、シートがリクライニングになっているわけでもない。
「……お尻が痛い」
主砲尾栓の下で声がする。
ロキが情けない顔をして中腰になっている。
「振動で、お尻の方から骨がバラバラになりそうだよ」
「辛抱しろ、ノルデン鉄橋までは油断できないからな」
来るときにシリンダー融合体に襲われた。なんとか切り抜けたが、いつ襲われるかしれないので、うかつに車外には出られないのだ。それに、襲ってくるのはシリンダーとその融合体とは限らない。ムヘンには確認されているだけでも九十九種類のクリーチャーが確認されている。
「ん……?」
ロキの尻の方で動くものがある。ロキも気づいて後ろを見ると、シリンダーの幼体であるポチがスリスリしている。
「ポチ……そうか、お尻が痛いから撫でてくれているんだな」
ロキがしみじみ言うと、ポチがこころなしポッと赤くなったような気がした。
「ごめんよポチ、気を使わせちまったな。いいよ、おかげでマシになった」
ロキがやせ我慢を言うと、ポチはロキの頬に回ってスリスリする。
尻のマッサージよりも効き目があるようで、ロキはくすぐったそうに目を細めている。
ピピピピ ピピピピ ピピピピ
突然アラームが鳴った。
「できた!」
通信手席のブリュンヒルデが声をあげる。アラームはブリュンヒルデの手元からしている。
「なにをしてるんだ?」
車内のみんなの視線がブリュンヒルデに集まって、バレンタインチョコを上手く作れた女子中学生のような笑顔で振り返る。その手には、スマホみたいなのが掲げられている。
「クリーチャーアラームを作ったんだ! 略してCアラームだ!」
なるほど、ピピピのアラームはブリュンヒルデの手元のそれから発している。
「てことは、間近にクリーチャーが!?」
ケイトが足を上げてアタフタする。
「ポチに反応したんでしょ」
「ポチは除外にしておいてください」
車長と操縦手のシートから声がする。ブリュンヒルデが数回画面を操作するとアラームは消えた。
「ポチは、別の登録にしておいた」
「え、どんなの?」
乗り出したロキの鼻先のポチにCアラームが突き付けられる。
ポチポチ ポチポチ ポチポチ
これは分かりやすい、操縦桿を握ったタングリスまでが笑っている。
タングリスは、笑うと意外に可愛い……思ったが言わない。
「じゃ、Cアラームが鳴らないのを確認して休憩にしよう」
ブリュンヒルデがOKサインを出して、四号は停車した。
ガチャリ
一斉に五か所のハッチを開ける。
うーーーーーん
思わずのびをして、深呼吸したくなるような新緑の空気と日差しに生き返る五人であった。
☆ ステータス
HP:2000 MP:1000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・25 マップ:3 金の針:5 所持金:8000ギル
装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
グリ(タングリス) トール元帥の副官 グニ(タングニョースト)と共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
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