第47話『シリンダー融合体との激戦!』    


かの世界この世界:47     


『シリンダー融合体との激戦!』    






 連携して戦うのは初めてだ。




 でも、四人はベテランのパーティーのように展開した。


 弓を得物とするケイトは後方から矢を射かける。


 グリは戦車兵のはずなのが、いつのまにか五メートルはあろうかという鞭を構えて融合体の右翼にまわっている。


 ブリはヘリコプターのようにツィンテールを旋回させて左翼でホバリング。


 わたしは、ソードを右手にダガーを左手に構えて二刀流。




 合図があったわけではない。




 四人とも、無意識に全員の態勢が整うのを待っていた。


 そして、ほんのコンマ二秒で占位し終えると、一斉に融合体に跳びかかった。


 トリャー! 


 ブリは一声を放つとツィンテールを高速回転させながら融合体の周囲を飛んで蹴散らしていく。


 セイ! セイ! 


 掛け声も勇ましく、一振りで数十個のシリンダーを叩き潰すグリ。


 …………! …………!  


 意外に無言で攻め立てているのはケイトだ。


 矢筒には数本の矢が入っているだけなのだが、それはいくら撃っても減りはしない。ただ、ツィンテールや鞭に比べて速度が遅い。一矢放つのに一秒ちょっとかかっている。幾千幾万あるか分からないシリンダーと対峙するには心もとない。


 トーー! ヤーー!


 古典的な掛け声で迫るのはわたしだ。


 恥ずかしながら、一度の剣戟で倒せるのは数体のシリンダーに過ぎない。うかうか融合体の傍にいては圧倒的なシリンダーに食いつかれ、雪ダルマならぬシリンダルマになって圧殺されてしまう。せいぜい三度の攻撃で離脱せざるを得ない。


 トヤーー!! セヤーー!!


 力を強めながら再度、再々度攻撃を加える!


 攻撃に気を取られているうちに、背中や足、頭にシリンダーは食らいついてくる。


 シリンダー一つ一つの威力はしれているが、度重なるとバカにならない、一分とたたないうちにHPゲージは半分を割るほどになってしまう。


 ブリとグリは、ツィンテールと鞭の違いはあるが、高速で旋回するので旋回半径に入ったシリンダーは粗方が蹴散らされる。


 しかし、ほんの僅かが、旋回の間隙から突き進んで、あるものは打撃を与え、あるものは食らいつく。そして、しだいに動きを鈍らせていくではないか!


 ウオーーー!


 渾身の吶喊でシリンダルマになりかけた二人に接近、二撃、三撃加えて離脱。


 すまん!


 瞬間の感謝を口にし、再び攻撃に向かう二人!


 アナライズすると、融合体のHPバーは七十パーセントのところで増減を繰り返している。


 周囲を窺うと、融合体は我々との戦闘をこなしながらも、強力な引力でシリンダーを取り込んでいる。


 かたや、我々はHP残量は四十パーセントほど。


 我々のHPは確実に減っていくが、融合体は増減が拮抗して、ブレながらも七十パーセントを維持している。


 このままではじり貧だ!


 ブチ!


 そう思った時、グリの鞭が手元の所で千切れて明後日の方角に飛んでしまった!


 残り一本の鞭で戦闘を継続するも、シリンダーの威力が勝っていて、十秒もたたないうちに融合体に取り込まれそうになる。




 トギャーーーー!!!


 グォーーーーー!!!




 期せずして、ブリと共に救援に向かう。


 ビシバシ! バリバリ! 


 叩き、引き剥がして、グリを救助し、一気に数百メートル離脱する。




「だめだ、HPが……」




 グリのHPは二目盛り残すのみだ。それも、点滅を繰り返し、放置していれば数秒で消えてしまうだろう。


「に、逃げてください……」


「しっかりしろ!」


 最後の一目盛りが消えた……その刹那、グリのHPバーがエメラルドグリーンに底光りして、次の瞬間にはゲージに満杯のグリーンに復活した!


「こ、これは?」


 目を転ずると、中空に両手を広げて十字の姿勢になったケイトがグリーンに光ながら浮遊している。


 ケアルフラーーーーッシュ!


 ケイトにはヒーラーの素養があったのだった!


 ステータスが上がった。




☆ ステータス


 HP:1000 MP:800 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・20 マップ:3 金の針:5 所持金:8000ギル


 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)


 


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘


 グリ(タングリス)   トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 


 

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