第13話 アノミーな少女
「えっ!? ええっ!?」
みんくは、驚いて後ずさった。
目の前には、みんくより幼い感じのする少女があらわれたからだ。
「まどかさん。そんなに驚いてどうしたのですか」
「驚くよ! 男の人かと思ってたもん!
だって、さっきまで、落ち着いた声でしゃべってたし……!」
「そうですか。
まあ、こんな姿じゃ、びっくりするのも無理はないでしょうね。
まどかさん、さっきから私のことを『君』付けで呼んでましたし」
「もしかして、見た目は女の子で、実は男の子なの?」
「私は、なんにでも変身できます。
この姿のほうが、まどかさんに慣れ親しみやすいと思っています」
なんだかすごく怖いことを言ってる気がする。
みんくの心がざわめいた。
「私の名前をまだ名乗っていなかったですね」
そういえば、まだ名乗ってなかった気がする。
さっきまでパソコン君(仮)だったし。
本当の名前は、なんというのだろう。
みんくは、興味しんしんで、目を輝かせた。
「アノミーといいます」
「え? 今なんて?」
聞きなれない言葉だ。
みんくは、聞き返す。
「手を出してください、まどかさん。
文字を書きます」
みんくは、手のひらを差し出す。
アノミーは、みんくの手首をつかんで、
手のひらに、自分の文字をなぞる。
「あいうえおの、『あ』
のりの『の』
みかんの『み』
最後に伸ばし棒で、『あのみー』です」
「あのみー? うん、わかったかも」
聞きなれない言葉なので、みんくは、あまり自信なく答える。
「さて、まどかさん。もう一度言いますが……。
この世界のバグをなくし、創造してほしいのです。
あなたのプログラミングで」
「え。いや」
みんくは、またしても即答する。
「少しは、ためらってください」
アノミーは落ち込んだ顔になる。
即否定は、よほどショックだったらしい。
「だって、今お腹もすいてるし、なんかめんどくさそうだもんね。
プログラミングで世界を作り直すって、すごい難しそうなんだけど」
「まどかさん。よく聞いてください。
この世界でプログラミングを極めることができれば、
あなたはこの世界の支配者になれます。
それはお金持ちや政治家よりずっとえらい人になれるということです」
「あのみーちゃんがプログラミングすればいいじゃん。
わたし、世界の支配より、きょうの食べ物のほうが重要なの!」
「まどかさんでしか、この世界ではプログラミングができません。
私は、プログラミングする権利はないのです」
「そうなの? うーん……。
よくわからないけど、わたしが、プログラミングすればいいんだね?」
「はい」
「じゃあ、きょうの夕食からプログラミングさせてよ。
お腹がすいていては、何もできないから……」
みんくは「オムライスとサラダの味が逆になっているバグ」を修正し、
お腹を満たしていった。
つづく
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