第2話 あいかわらずな二人

「どうしたんだ?下駄箱見つめて?…ずいぶんと暗い顔してるじゃないか」

「何だ、お前か…」

「どうしたんだよ?」

「…チョコが…チョコが入ってない!」

「毎年の事だろ?」

「あぁ~~!!お前、言うてはならん事を!!」

「そもそもだな、校則で学校で渡したらいけない事になってるだろ?」

「ふ~~ん。で、お前が抱えてる、ソレはなんだよ?」

「チョコだよ」

「…先生ぇ~~!!」

「来る時に貰ったんだから仕方ないだろ?」

「来る時?他校の生徒からも貰ったのかよ!!」

「迷惑な話だよな、荷物増えるしさ」

「今、無性に叩きたくなったのは、俺だけじゃないよな?」

「誰に聞いてるんだよ?」

「クソッ!なんでお前ばっかり…おかしい!間違ってるぞ!この近辺の婦女子には見る目がないのか?」

「婦女子って…少なくとも、今の言葉で、五人はお前に対して嫌悪感をいだいただろうな」

「!?マジで?」

「…遅刻するぞ」

「無視かよ」

「…机は確認したのかよ?」

「おぉ!それは見てなかった…きっとあるに違いない!!」

「はぁ~~」

「チョコ抱えてため息ついても、誰も心配なんかしないぞ?」

「何で…」

「どうしたんだ?」

「…チョコいるのか?」

「くれるのか?」

「…一つだけやるよ」

「じゃぁ、その大きい包みがいいなぁ」

「コレはダメだよ。お前にやるのはこっちのだよ」

「うわっ!カバンの中まで、チョコ入ってるのかよ!…おかしい、絶対に間違ってる!!」

「うるさい奴だなぁ、いらないのか?」

「いる!!」

「じゃぁ、コレをやるよ」

「なんだよ、ずいぶんと小さいのだな」

「いらないのか?」

「いる!!!」

「そればっかだな…はぁ~~」

「どうしたんだよ?」

「…何でかなって思っただけだよ」

「何が?」

「…質問しながら、包みを開けるなよ!」

「朝食、食べれなかったんだよ。…コレ手作りみたいだけど、いいのか?本当に?」

「…ソレは、いいんだよ」

「?ふ~ん、ありがたくいただくとするよ」

「美味いか?」

「美味いよ。鬼のように固いけどな」

「ごめん」

「何、謝ってるんだよ?」

「無理して食べなくてもいいぞ?」

「俺のためじゃないんだろうけど、作ってくれた娘に悪いだろ?それに、味は美味いしな」

「そうか?」

「お前もプレゼントされたんだから、責任持って食べなくちゃダメだぞ。って、貰って食べてる俺が言っても説得力ゼロだけどな」

「心配するなよ、ソレは貰ったのじゃないから」

「!?お前、拾ったのよこしやがったな!!」

「はぁ~~」

「正直に話したら許してやるぞ?」

「…お前ってさぁ」

「何だよ?」

「ニブイ奴だよな」

「なんで?」

「去年のクリスマスは何してた?」

「何だよ、突然?」

「バイトだったろ?」

「…一人の夜だったよ、寂しくバイトしてたさ。泣きたくなるような事を思い出させるなよ」

「本当に涙目になるなよ!」

「一人のクリスマスだぞ!それもバイト!涙してもいはずだ!」

「そんな事、力説するなよ」

「で、クリスマスがどうしたんだ?」

「お前、バイトの後輩に誘われたのに気付いてないだろ?」

「!?いつ?」

「クリスマスの話してるだろ?」

「アレは誘われた事になるのか?」

「他に取りようがないと思うぞ『私、今日は予定ないんですけど、先輩は予定あるんですか?』なんてな」

「そうなのか?」

「それに対して『予定?ないよ。お互い、家で寂しくだな。お疲れ様』って、そりゃないだろ、普通」

「もっと早く言えよ!…連絡先聞いとくんだった」

「辞めたのか?」

「年明けてから見ないんで、店長に聞いたんだよ。そしたら…あ゛~~!!」

「叫ぶなよ」

「俺って…そんなにニブいのか?」

「結果が物語ってるよな」

「はぁ~…帰るわ」

「学校まで来たのにか?」

「飲みたい気分なんだ」

「朝からかよ!しかも、学校で言うな!」

「先生には適当に言っといてくれよ」

「はぁ~、仕方ない、付き合ってやるよ」

「…いい奴だよな、お前ってさ」

「涙ぐむなよ、当たり前だろ?こんなにお前を想ってる奴は他にいないと思うぞ」

「そうだよなぁ…さてと何しようかね?」

「とりあえず、帰って着替えようぜ。制服で遊びに行く気にはなれないからな」

「確かにな」

「さ、帰ろう」

「ああ…ところで、相談なんだけどな…」

「何だよ?」

「チョコ食べきれないだろ?もう少し貰ってもいいぞ?」

「受け取ったんだから、責任持って食べるさ」

「…智のケチ!」

「…敏夫のバカ!」

二人はじゃれるように学校を後にした。


Fin

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