第17話 俺達にも稽古つけてくんねぇかな?
受付でギルドカードを受け取っているコジローを部屋の隅から見ている3人の冒険者が居た。
リーダー格の男の名前はドジル。新人が入るたびに絡み、強請り集りをしている男だった。
新人が入る度に絡む先輩はどこのギルドにも居る。
「教育」と称して影で暴力をふるい、舎弟にして雑用をさせたりするのである。実力を伴わない生意気な新人の鼻っ柱を折る必要はあるし、先輩の雑用をこなすのも勉強になる面もある。実力があっても、その程度のトラブルをうまく処理できないのではやっていけない。そのような意味あいで、新人イビリを放置しているギルドも多いのである。
だが、リエはそれは許さない方針であった。新人が冒険者を続けられなくなったり、別の街に行ってやり直すケースが増えていたためである。
ドジル達は特に質が悪く、しかも目立つ場所ではやらない。被害にあった者達もドジルを恐れて誰もはっきり訴えないので、なかなか取り締まれないでいたのだった。
そんな連中がコジローを見ていることにリエも気付いていたが、コジローならドジル程度なら負けないであろうと判断し、あえて放置、影から見張る事にした。これを機にその連中を粛清してしまいたい。
ドジル達は、ギルドから出たコジローとマロを追うように出ていった。
とりあえず宿を探そうと思っていたコジローだったが、ギルドに戻ってどこか紹介してもらったほうがいいかと思い、引き返そうとしたところ、ドジルに声をかけられた。
「よお兄ちゃん、今日泊まる宿は決まってるのかい?」
「いや、ギルドに戻って紹介してもらおうかと思っていたところだ。」
「それだったらいい宿知ってるから追いてこいよ、俺はドジルだ、こいつは手下A、こっちは手下Bだ、よろしくな!」
いやらしい笑みを浮かべてドジルはコジローの肩を抱き、なかば無理やり裏路地へと入っていく。
不穏な空気に「グルルルルル」とマロは唸るが、コジローは、もしかしたら本当に親切なだけかもしれないと、手を上げてマロを制する。
しかし、ドジルたちは路地裏に入り、さらにどんどん人気のない路地の奥へと進んでいく。
こんなところに宿があるのか・・・?
だが、安くて良い宿が下町に隠れてあったりするのかも知れない。
だが、スラム街に近い場所まで来て、ドジル達は正体を表した。
手下A:「兄ちゃん、ギルドマスターに勝ったんだって?」
ドジル:「ほんとかぁ?ちょっと信じられないなぁ・・・」
手下B:「ギルマスも本気じゃなかったって言ってたから、手加減してもらったんじゃないすかね?」
手下A:「いやいや、手加減してもらっても、あの暴風剣女に勝つのは難しいだろ。実力だよ。」
ドジル:「なぁ、ちょっと、俺達にも稽古つけてくんねぇかな?」
剣を抜くドジル達。
「なんの真似だ?」
とコジロー。
「グルルルルル」
威嚇するマロ。
マロの迫力にちょっとビビるドジルだったが、それなりに胆力は持っているようで、逃げ出したりはしなかった。
「おっと、犬には手を出させるなよ、ただの剣術の稽古だよ。安心しな、コレがあれば本気でやれるだろ?」
と言い、ポケットからポーションを取り出し路地の隅に置いた。
「多少の怪我はこれで治るから大丈夫。ま、多少痛い思いは見るかもしれんが、それも勉強だ。殺しはしないから安心しろ。」
「冒険者の、手加減なしの本気って奴を一度教えてやらにゃあな。」
「新人に調子に乗られて、失敗して死なれても困るからなぁ。先輩のありがたい教育だよ。」
なるほど、この世界では、怪我はポーションや治癒魔法で簡単に治ってしまうから、怪我をさせる程度なら躊躇は必要ないって事か。
「グルルルルル」
マロが殺る気満々で唸る。
マロに任せれば大丈夫かも?
こんな連中は一瞬で片付けてくれるだろう。
自分はテイマーだ、自分で剣で戦うことはない。
とコジローは思ったが・・・
絡んできた男たちを殺る気満々で威嚇するマロ。
コジローも、マロに任せてしまえばよいと一瞬思ったのだが・・・しかし、もし、マロが相手に怪我をさせたり、ましてや殺してしまったりしたら、こちらが悪くなる可能性があると思いなおした。
地球でも人間を傷つけたペットは殺処分になってしまうと聞いたのを思い出す。
事実、この世界でも、街の中に入った従魔が何か問題を起こしたら、その全責任はその飼主が問われると言われている。
連中もギリギリ犯罪にならないよう誤魔化すために「稽古」と言い張っているのだ。きっとマロに攻撃されれば、後でそこを非難してくる可能性は高いだろう。
それにこの手の輩は、もし獣魔に蹴散らしてもらったなら、今度は従魔の居ない時を狙って絡んでくる可能性が高い。
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