第39話 誰も見ていないからわからないだろう、の話

 表題の事項は間違いである、にも関わらずこの現代に蔓延りすぎています。誰も見ていないのは事実かもしれませんが常にあなたを見ている存在があります。それは「あなた、自分自身」です。さらに追及されるとしらばっくれる。わからないだろうと高を括っているからです。

 仮にあなたが万引きしたとします。万引きできたということは、誰もいないか、誰も見ていないかを十分確認したうえで実行された結果だと思われます。さて、誰にも見られず万引きを成功したあなたは、しめしめと思って家に帰ります。しかし、家に帰った後あなたは何度もこう思うでしょう。

「誰も見ていなかったよな」

 十分確認したとしてもそう思ってしまうということは「ひょっとして誰かに見られていたのではないか?」という感覚がどこかにあるからです。それは「自分自身」の存在であり、自分自身に見られているということだと私は思うのです。

 何も万引きに限ったことではありません。些細な出来事でも同じです。

 自動車関係の仕事をしていた時分のお話です。私の探している車の鍵が見当たりません。私の性分でいい加減なことは言えませんから、三回確認して結果が同じなら相談報告すると決めていました。遠い距離を3往復して鍵を探しましたが、保管している箱にも見当たりません。そこで先輩にその件を相談しました。結構な社員の前で話しましたので、ある程度そこに居た皆には耳に入ったはずです。

 時間がもったいないので報告だけしておいて一旦探すのをやめようとしましたが、もう一度探しに行ってもやっぱり見つからないので鍵の保管箱をもう一度確認しようとしました。すると、探していた鍵の入った保管箱を先輩が持ってきました。

と、箱の中をのぞくとすぐ手前にあるではないですか!

「この鍵、入ってました?」

「保管箱にあったよ」

 その鍵は箱の一番手前にあった。

「え?ちょっと待ってくださいよ。三回探してなかったんですよ?そんなわけないでしょ。おれだってこの位置にあればすぐにわかりますって」

「いや、そう言われたっておれは箱持ってきただけだから」

 先輩は鍵を入れた人物ではないとの推測から、ほかの第三者が鍵を自分にわからないように後でこっそり入れ込んだのだと思った私は、誰がその犯人なのか捜すことにしました。何回かこういった事があって、へとへとになっても黙認していましたがさすがの私も堪忍袋の緒が切れました。しかも犯行時間は15分程度の間。私が鍵を探していた時間に限られている。確実に犯人は判明するはず。その根拠は鍵の置いてある事務所には防犯カメラが見れるのです。それを確認すればすぐにわかる歴然とした証拠です。

 この15分の間、鍵を触る人物は限定されるし防犯カメラに映っている鍵箱付近にうろつく私以外の人物は確実に犯人です。私は防犯カメラの録画映像を確認しました。すると、この時間に鍵箱付近にいるのは私と相談した先輩そして他にもう一人が映っていました。その人物は私よりずっと若い営業社員でした。先輩は鍵箱を持ってきただけなので無関係です。となると、この営業社員が犯人で確定です。私は彼に詰め寄りました。

「この鍵を鍵箱に入れたのあなたでしょ?」

「知りません」

「知りませんじゃないでしょ。防犯カメラに映ってるんだから」

「だから知りません」

「あなた、おれが走り回ってるのわかってて鍵を戻したんだろ。どうせ気づかないだろうって」

 結局、上長にこの話を相談しましたが相手にされず、なしのつぶてでした。

 周りに誰もいないようでも誰も見ていないはずなどない、わからないはずなどないのです。どんな完全犯罪をしようとも、最終的にはほぼ解明されてしまうし解明されないままでも自分自身が見ているため、その罪悪感にかられ続けるのです。

 そんな生き方をして平気なんでしょうか?人によりますが、どこかで心に引っかかってそわそわし続ける、そんな人生は送りたくないですよね。たとえ、ポイ捨てや鍵を黙って置いておく些細なことであったとしてもです。

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