第51話 納車

 電話を終えた俺は、改めてパソコン画面に向かう。

 相変わらずランキングはトップだったぜ。


 感想ページを開くと、大体一話に付き十件から十五件程の感想をいただいてる感じだな。

 当然全部に目は通すけど、返信を全部にするのはもはや不可能だな。


『テネブル先生、いつも楽しく拝見させていただいてます。もっと強い敵とか出てこないんですか? 敵が弱くて盛り上がりに欠けてるような気がしますので』 バトル好き

『中々強い敵に出会わないんですよね。まぁ街道沿いの敵が強いと旅なんかできないから、しょうが無いかな? 護衛任務が終ったら、ラーニングもしたいから強い敵を探すのもいいかな? って思ってます』 テネブル


『ケモミミ登場を願います。狐耳に巫女服希望です』 狐っ娘ラブ

『ケモミミ今後出てきます! 残念ながらまだ狐耳はギルド嬢の人しか出会って無いので、巫女服は難しそうです……』 テネブル


『鑑定はみんな使えるの? それとも自分のステータスだけ見れるの?』 ユウヤ

『自分のステータスは見れるみたいだけど、恐らくSPは見えて無いと思います。鑑定は、持ってたら商人やギルドの買取カウンター職員として優遇されてるみたいです』 テネブル


『HPとかMPって無いんですか?』 ayumu670612

『そう言えばないですね? ステータスがあるからあっても不思議じゃないですけど、表示されないから無いと思います』 テネブル


 中々業の深い読者も交じってるな……

 巫女服とか絶対こっちの世界でしか売ってないような気がするな?


 それもコスプレ店とかしか。

 ド〇キとか行って見てみようかな?


 着てくれる人もいるかもしれないし。


 いかにも本当に行って来てるような、感想の書き方の方が読者も妄想膨らむだろうし、返信はこの方向性で問題無いよな?


 でも装備品って、もしかして爺ちゃんの作ったような武器とかとかじゃ無いと攻撃力のプラスとか無いのか? 今度『ラビットホーン』のチェダーさんに聞こう。


 最初に装備したのが攻撃力付いてたりしたから、あるのが当たり前だと思ったけど当り前じゃ無いかもね?


 気になったから、巫女服ググってみたぜ。

 ふむ、本物の巫女さんが着るような服も売ってるんだな。

 値段はコスプレ用だと五千円以内だけど、すぐ破れそうだし、本物でも二万円ほどか。

 でも下に何着たら良いかなんて解らないな。

 和装品店でも行って聞いて見ようかな?


 そんなこんなで夜の十時くらいまで頑張って五話分書き貯めたぜ。

 風呂を自分で入れるのも面倒かな? と思ってスーパー銭湯に出かける事にした。


 風呂上りにド〇キによってコスプレの衣装見に来たけど、素材的にちょっとどうなんだろう? と思う微妙なラインナップだ。

 それでも何種類かのコスチュームを買い込んで、レジに並んだぜ! 他のお客さんは時間帯的にも若い子が多く視線が痛く感じたけど気にしたら負けだぜ!


ミニスカナース服のシスターとか激しく見たいんだよ俺は!


 この店には時計も色々揃っていたから、自動巻きの日付表示のあるタイプの時計を何種類か買ってきた。

 きっといい値段で売れるはずだ。

 

 家に戻ると朝型の四時くらいまでの時間をかけて、更に三話ほど執筆した。

 一話に付き二枚のイラストを挿入しているから、かなり見栄えだけは良いよな。


 誤字脱字や句読点が微妙なのは、もしちゃんと書籍化する時には推敲するから、しばしお待ちください!

 と、あらすじ欄に入れておいたぜ!


 ひと眠りするとも朝の九時前だった。

 顔を洗って、シャワーを浴びると青木から連絡があった。

 朝一で登録も終わらせて、今からこっちに向かうそうだ。

 三十分も掛からないって事だった。


 車載車のままで持って来るらしい。

 到着までの間を、ランキングページの確認をしながら待っていたけど、とうとう週間でも一位になっていた。

 月間では、まだやっと十位だ。

 それでもまだ連載開始から二週間は経っていないので、十分に凄いと思う。

 まじ読者様神! って思うよな。


 あれ? そういえば爺ちゃん誰か連絡してくるって言って無かったかな?

 俺が連絡するとか言う話では無かったよな? まぁいいや別に急いでは無いし。


 そうこうしてると、トラック特有のクラクションの音が聞こえた。

 表を除くと車載車が到着していた。


 こいつは思ってた以上に凄いぜ。

 真っ白なボディに赤茶色のキャンパストップの幌をかぶり、シートも幌と同じ赤茶色のレザーシートだ。


 ちょっと左ハンドルだったらどうしよう? とか思ってたが、右ハンドルの日本仕様だった。

 一安心だぜ。


「奥田、こいつは一応国内様にデチューンしてあるが、希望すればすぐにフルの状態に戻してやれるぞ。フルの状態なら、時速340㎞まで出るモンスター仕様だからな。馬力はこの一つ前のモデルより五十馬力上がった六百五十馬力だ」

「青木……俺を何処に向かわせようとしてる? 俺は別にF1レーサー目指して無いからな? 普通にその辺のコンビニとかファミレス行くくらいしか使わねぇよ」


「馬鹿かお前? この車で繁華街流してみろ。遊び相手に困る事は絶対無いと俺が保証してやる。そん時にこの車に合う程度の身だしなみや、ドライビングテクニックが無いと、せっかくの車が宝の持ち腐れになるからな! それなりの車に乗る奴には、それにふさわしいドライバーである責任があるんだぞ?」

「青木……お前さ実はあんまり車売れてないだろ?」


「何をいきなり……確かに営業成績は毎月ドベ争いだが、何故そんな事が分かる?」

「お前さ、こんな車買えるほどの連中が、そんな走り屋的な思考してるやつばかりだったら怖いだろ? お前の考えをを語るんじゃ無くて、前半の女にもてるとかその辺りで止めておけば、きっと今より売れると思うぞ?」


 そんな話をしてると、車載車の運転手が声をかけて来た。


「お客さんよく解ってますね。青木さん良い営業マンだと思うんですけど一言多くて取りこぼしが結構あるんですよ。よく言ってあげて下さい。青木さーん、俺は先に戻っていていいですか? こっちから帰り便で一台引き取りもありますからー」

「梅ちゃんありがとうな、俺は新幹線で戻るから大丈夫だ、引き取り頼むな」


「ほらな。やっぱ気づいてないのはお前だけだ」

「そうか、気を付ける。だがこの車で流せば入れ食いまでは本当だからな。とりあえず昼飯行こうぜ、その車の試運転兼ねて」


「それなら高速入って関門海峡のサービスエリアまで行くか? ちょっと踏んでみたいしな」

「OKだ」


「四十男二人で試運転も色気ないな」

「奥田、お前なんか凄い余裕ある感じがするけど何かあったのか?」


「別に? ニート生活が俺にはあってるみたいだって気付いたくらいかな?」

「お前、本当にそうなら、この車買う余裕なんてないだろ? 良い話あるんだったら俺にも教えろよ」


「まぁ気が向いたらな」


 サービスエリアの駐車場に止めると確かに注目を集めた。

 女子大生っぽい二人組が近寄ってきて、この車をバックに「インスタ用の写真とってもいいですか?」と尋ねて来たから、関門橋と車が両方入るような位置に移動して撮影させてあげた。

 二人とも博多の学生さんみたいで、今日は自分たちの軽自動車でドライブ中だと言ってた。

 折角だからと俺も少し調子に乗って、この二人にもランチを奢る事にして一緒に食事をした。

 ラインのアドレスを聞かれたから交換してから帰宅した。


 まだ香織とは正式に付き合ってる訳じゃ無いんだし、これはセーフだよな?

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