第23話 後は手を取るだけよ?
「……ぅ、ん。」
ふらふらと目を覚ます。
何故か大きなクッションのような物を抱き込んでおり、髪も綺麗に梳かれて寝台に添えられて。何なら毛布の上から女帝の物らしきコートまで掛けられている。
「……ぇ。」
昨日、何があったんだっけ。昨日、何された?
何処か愉しそうな女帝に食事と飲酒を迫られたのまでは覚えている。あまりにも注いでくるペースが早いからグラスから零れそうになって、捨てるのももったいなくて大人しく飲んでて。
「……そう、か。そのまま、寝たんだ。」
なら、この状態は何だ。
幾ら考えても答えは出てくれない。何で、何でと疑問ばかりが
「どぉおん!!」
「、」
「あ、起きた?」
「いや、起きてなくても今ので起きかねんだろ。」
「んふふ。ほら、こっちおいで。ご飯にしましょ。」
一か八か、聞いてみるか?……いや、でもそれで何か変な事されたのを報告されても困る。
「時雨ちゃん。」
「……何。」
「私は、本当に時雨ちゃんの事大事に想ってるからね。いつでも甘えて良いし、いつでも求めて良いし、いつでも願って良いんだよ。」
きゅ、と空気が胸で詰まるのが分かる。酷く、苦しい。
だが気にする様子もなくリビングへ連れてこられてまた、昨日のように食事を勧められる。
「私は何があっても貴方の味方で居る。私は何があっても貴方の為に行動してあげる。」
―――みきっ
「……女帝。それぐらいにしてくれ。」
「世界が敵に回ろうとも。この世の全てが貴方の敵になろうとも、私は貴方の過去を始めとし、死後も全部愛して守って寵愛の限りを尽くすから。」
きりきりと痛む肺と胃に此方が必死に耐えているのも気にせず、私の両頬を包んで
「ねぇ、これでも駄目?これでも、私は貴方の理解者になってあげられないのかな。」
嗚呼、もう崩れ去ってしまいそう。
「……良い。」
「え?」
「もう、良い。」
「ちょ、時雨ちゃん!?」
ぐったり、と重力に従う体を制御する事もせずに倒す。
それを包み込むように支えてくれた、狼狽えているゼルディアの抱擁を受け入れて服を掴む。
「もう、良いよ。もう良い。もう良いから。」
「良い、って……。」
「好きにしてくれ。もう嫌だ、全部、全部投げ捨てたい。言ったからには責任を取れ、ここまで私を壊したんだから責任を取ってくれ。もう、もう疲れたんだ。全て消してしまいたい。全て壊してしまいたい。もう、何も見たくない。」
「……ん、分かった。」
このまま永久の眠りにでも就かせてくれ。
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