第16話 小さな嘆き

 あれから数時間。

 時雨ちゃんはさっきよりも少し取り乱している。眠ってはいるが、ずっと同じ言葉を呟いて。


「……おか……あ、さ……。ど……こ、い……。」

「……時雨ちゃん。」


 読んでいる本に栞を挟んで眠る時雨ちゃんの手を優しく握れば弱々しく手を握り返してくれる。


「大丈夫よ。私の手が届く所に居る限り、怖がらなくて良いんだよ。」

「ん~?ゼルディア、その子が例の?」

「ええ、この子が時雨ちゃん。眠ってる時は素直なんだけどねぇ……。」

「……この子、ちょっと預かって良い?1週間程この子を貸して?」

「い、良いけど……何するの?」

「この子がもっと素直になるように色んな物を教育してあげる。大丈夫、怪我なんてさせないよ♪」

「……うん、分かった。任せるわ。時雨ちゃんを……お願いね。」

「ええ、任せて頂戴。」

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