王様ゲーム その三

「3ターン目始めます」


 王様は橋羽君だ。


「なんでもいいの?それなら、1番と4番がキ♡ス♡」


 特大爆弾をぶっこんで来た。

 生物室がしんと静まり返る。

 佐久間先輩はニヤニヤと笑みを浮かべているが。


「おーい、1番と4番、挙手!」


 橋羽君が楽しそうに場を仕切る。


「……4番、あたしです」


「1番、僕……」


 寺峰と永田が手を挙げた。佐久間先輩がムスッとした顔になる。


「佐久間先輩、BL展開じゃないからって、あからさまに顔に出さないでください」


「百合でも良かったんだけどなあ」


 もうちょっとノーマルなラブコメにも興味を持ってくださいよ……って、そういう問題じゃない。

 私と佐久間先輩がやり取りをしている間、永田が固まって動かない。ぶちょーといい永田といい、フリーズしすぎだ。


「ひゅうひゅう!永田!男見せろよ!」


 ジョーが煽るが、依然として永田は固まったままだ。

 だめだこりゃ……

 と、思ったその時。


「ちょっとごめんね」


 寺峰がすっと永田の手を取ってーー


 ちゅ


 ーーわーい、寺峰、イケメンだあ。

 永田のほうは耳まで真っ赤になっている。女子に免疫がないんだろうか。

 東野君は両手で顔を覆っている……って、指の間から見えてるよね。チラチラ見てるよね?


「おお、寺峰、男前だな」


 金ケ崎が茶々を入れる。


「えー、そんなんじゃだめだって。口にしてくれないと面白くないじゃん」


 橋羽君が唇を尖らせて言った。永田がさらに赤くなる。寺峰も流石に戸惑っている。


「それは流石にまずいでしょ」


 私も止めに入る。中学生にはまだ早すぎるだろう。


「直でしろとは言わないけどさ」


 ジョーが黒い笑みを浮かべて言う。


「じゃあ、ラップでも挟めばいいんじゃね?」


「いや、それでも薄いだろう」


 八島さんがいいこと思いついた、というように、ぽん、と手のひらを叩いた。


「水槽の蓋などいかがでしょう?あれなら分厚いですし、透明なのでちょうどいいかと」


 いやいや、それはそれで変だぞ。絵面がおかしいことに……


「それだ!」


 いいんかいっ!


「寺峰さん、永田君、水槽の蓋ーーって、あれ?」


 佐久間先輩が振り返ると、二人の姿はなかった。


「あいつら、逃げやがったな……」


 それからいくら探しても見つからないので、なんやかんやあって、ぶちょーとジョーが水槽の蓋越しにキスする羽目になった。

 ジョーが、男二人のキスなんて誰得だよ……とぼやいていたが、残念、佐久間先輩得である。





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