第120話 アサシンギルド壊滅


 ミカミさん達のいるところに戻って、早速さっき金庫を見つけて大量にお金を回収したことを報告した。すると、満足そうに何度も頷きながらミカミさんはシアの頭を撫でた。


「よ~しよし、シアちゃん偉いぞぉ~。」


「えへへへぇ~♪」


 ひとしきりシアの頭を撫でた後、袋の中に入っている白金貨の数を確認することになった。一つの袋を逆さまにして机の上に白金貨を広げてから、一枚一枚数えていく。


「これで100ま~い。」


「こっちも100枚ありました。」


「こちらも100枚ございます。」


 数えてみたところ、白金貨の数は合計で320枚も入っていた。他の硬貨は一枚もない。


「うひゃ~、いったい何のためにこんなに白金貨を貯め込んでたんだろ?一応これだけお金があれば、柊君の夢を達成するには十分すぎると思うけど……。このお金さ、一回私に預けてくれないかな?」


「良いですよ。どんな悪いことをして稼いだものかもわからないですし、せっかくなら自分で稼いだお金を夢に使いたいですから。」


「ありがとう柊君。これがあればきっと大丈夫だよ。」


 数えた白金貨を全て袋に戻して、マジックバッグの中にしまった。その後、ミカミさんは未だ気絶しているアサシンギルドの長のところへと飛んでいく。


「さ・て・と……キミのレベルはいくつかな~?」


 じっとのぞき込むようにしてレベルを確認したミカミさんは、ニヤリと笑みを浮かべた。


「思った通り、老いぼれてても柊君よりレベルは上だね。ま、伊達に元一匹狼じゃないってことかぁ。おかげでやりやすいや。」


 ミカミさんはその辺に散らばていた一枚の何も書かれていない紙とペンを拾い上げると、俺のところへと持ってきた。


「柊君、ここに要求を書いてくれる?」


「あ、やっぱり要求はするんですね。」


「もちろんさぁ、むしろここからが本番だよ。」


 そして俺はミカミさんに言われた通りに、紙に要求を書いていく。今回は相手を辱めたりするようなものじゃなく、アサシンギルドが機能しなくなるように考えられた要求だった。


 ミカミさんが書いてくれとお願いしてきた要求は2つ。まずはアサシンギルドを解体すること。もう一つは今までの犯罪行為を全て証拠と共に国に提出し、出頭すること。


「この2つで良いですか?」


「うん、ばっちり。その紙を彼の手に握らせてあげて。」


「わかりました。」


 要求を書いた紙を、気絶しているアサシンギルドの長の手に握らせると、どこからともなく声が響いてくる。


『世界規約11条に則り、レガートにヒイラギの要求を強制執行します。』


「うん、オッケー完璧。これでアサシンギルドは彼が目覚めたら解体される。それと同時に彼らも捕まってお終いさ。」


「年貢の納め時ってやつですね。」


「おっ、良い表現を知ってるね柊君。まさにその通りだよ。さ、迷惑料も回収したし、もうここに用はないね。撤収するよみんな~。」


 目的を達成した後、俺達はすぐにその場を後にして近くの町のヴェールに立ち寄った。そしてヴェールにある料理店に入り、ちょっとしたお昼ご飯を食べながら今後のことについて話し合う事となる。


「さてさて、これからの話なんだけど~……5日後に開かれるリタちゃんのご両親のオークションに参加するために、王都に向かいたいんだよ。いいかな柊君?」


「もちろんいいですよ。」


「じゃ、これからまた馬車を取って出発にしよう。地図によると、王都はこのヴェールっていう町からけっこう離れてるし、時間がかかると思うんだ。」


 着々とこれからの予定が決まっていく最中、リタが少し申し訳なさそうに手を挙げた。


「あ、あの……ちょっとよろしいですの?」


「ん?どうしたのリタちゃん?」


「一つ疑問でしたの。なぜ貴方がたはわたくしのお父様とお母様を救おうとしてくださるのですか?貴方がたには何も利益なんてありませんわよね?」


「ん?利益はあるよ。リタちゃんのご両親を買えるじゃない。」


「お、お父様たちを買って何をさせるつもりですの?」


 少し警戒しながらリタはミカミさんに問いかける。するとその警戒を解くように、ミカミさんが柔らかい口調で話し始めた。


「安心していいよ。キミのご両親のことは奴隷として扱うつもりはない。なんなら買ってすぐに奴隷から解放してあげるつもりだよ。」


「そ、それじゃあ貴方がたの利益には何一つなりませんわ!!」


「リタちゃん、お話は最後まで聞こうね。……確かに、こうやって言っている限りでは、私たちに利益は無いように聞こえるよね。私達は別にキミのご両親を奴隷から解放して、それでお終いでも構わないんだけどさ、キミのご両親……いや、ヴェイルファースト家の人間が許してくれないと思うんだ。」


「……。」


「ヴェイルファースト家の人間は礼節を重んじる……そうなんでしょ?」


「…………なるほど、そういう事ですのね。確かに助けられたお礼をしたいと、お父様たちは言うと思いますわ。もちろんわたくしも、お父様たちを解放してくれたら、その恩義には報いるつもりですわ。」


「でも、もしそうなった場合、キミ達ができることって……なに?」


 ミカミさんの質問にリタは押し黙った。その反応をわかっていたように、ミカミさんは話を続ける。


「だからさ、もしそんな状況になったら私たちの手助けをしてほしいなって思ったんだ。」


「何をさせるつもりですの?」


「ん?簡単に言っちゃえば、私達が販売しているお菓子を作ったりするお手伝いかな。もちろんタダ働きはさせないよ。いらないって言っても、お給料も出すから。まっ、そういう話は、リタちゃんのご両親を救ってから詳しいことを話し合おうよ。」


 ミカミさんの話を聞いて少し安心したリタは、昼食として頼んだ野菜や薄切りの肉をパンで挟んだハンバーガーのような料理を、急いでお腹に詰めていた。


 そして俺達は昼食を食べ終えた後、王都に向かう馬車を探すために関所の方へと向かったのだった。


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