第61話「【タイマー】は、頭を抱える」

「……で、連れ帰ってきたと?」

「あ、はい」


 ところ変わって、ギルド受付。


 頭を抱えたセリーナ嬢が天井を仰ぐ。


「ルビンさん、アナタね、ソロになってから調子に乗ってません? あ、もうソロじゃないですけど……。ロリっ子連れて来たり、パツキンのボインなおねぇさんを連れてきたりと……」


 チラリと視線を寄越すセリーナ。

 その先には興味深そうにギルドをキョロキョロしていらっしゃるガンネルコマンダーこと、エリカの姿。


 うん……。思った通りメッチャ浮いてる。


 美人は美人なんだけど、あの黒衣、黒帽子は何とかならないのだろうか。

 本人曰く、防弾防刃防煙防炎防カビetcのスーパー繊維でできているのだとか……。


 なんだよ、防カビって!

 っていうか、セリーナ嬢───!! パツキンのバインとか古いな、おい!


「い、いや~……成り行きというか。ぶっちゃけ凄く嫌だというか───」


 ドカーーーーーーーーーーーーン!!


「誰をナンパしてんのよ、このスカポンタン!!」


「あだだだだだだだ! ナンパじゃねぇえ!!」

「ちょ、兄貴ぃぃぃい!」


 さらに頭を抱えるルビン。

 さっきからこんな調子で小さな騒ぎを起こしまくっている。

 今はなんというか、チンピラA、Bが絡んできたのを過剰防衛で撃退している所らしい。

 ガンネルを使わないだけましだけど、それにしたって手加減しろよ、おい。


「ルビンさん。ギルド内のトラブルは───」

「いや、待って! 俺のせい??」


「連れてきたのアンタやん」

「あ、はい」


 やばい……。

 セリーナ嬢の目が怖い。

 

「まぁ、事情が事情ですので多めに見ましょう。一応特殊依頼の範疇でもありますからね」

 はぁ、とため息をつきながら職員を寄越し、エリカとそれを見守って疲弊したレイナを別室に案内する。

 っていうか、最初からそうしてくれ。


「……ですが、面倒なことになりましたね」

「う……」


 セリーナ嬢はルビンの報告をまとめた調書を一枚一枚確認しながら言った。


 とくに、

「───ここですね。このエルフ文字の警告文。これは以前の調査ではなかったと思いますが、今になってなぜ……」

「え、えぇ。これだけを見ると、あの『時の神殿』───エリカ曰くエーベルト工廠の一部だそうですが、」


「古代の工場ですか……それも、現役で稼働する───」


 頭を抱えるセリーナ嬢。

 本来、新しい技術を発見できるチャンスでもあるので、喜ばしい情報なのだが、懸念事項が一点。


「そして、エルフが管理する施設……参りましたね」

「やっぱりまずいですか?」


 不味くないわけがないんだろうけど。


「まずいです。滅茶苦茶まずいです……。連中がエルフ文字で警告を残しているということは、本来人間を警告対象にしていないということです。本当に人間に警告するつもりなら、外交筋を通すか、もっと厳重に警護しているでしょう───」


 そりゃそうだ。


「ですが、それもなく。ただ単純にエルフという同胞に近づくな───ということは、彼等にとっての禁忌なのでしょう。そして、人間ごときには絶対に破られることがないと高を括っていたということです、それを……」


「そ、それを俺が暴いてしまった……?」

「えぇ」


 はぁ、とため息をつくセリーナ嬢。

 しかし、それを言われても困る……。


 たしかに【タイマー】のことを知りたいと思ったのはルビンではあるけど、これはギルドからの依頼なのだ。


「───正直を言いますと、エルフ文字の警告があるなら手を出していませんでした。しかし、確かに以前はなかったのです───……つまり、あそこには定期的にエルフが出入りしているのでしょう。恐らくは施設の維持補修のために」


「ま、マジっすか……」


 何のために?

 ……決まってる。エリカを封印するためだ。






 そう、あの『時の神殿』を出るときにエリカは言っていた。

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