アイスフレンド XV
二人と一匹はにらみ合う。仕掛けるタイミングを常に探りながら、ゆっくりと間合いを詰めていく。
アルトがほんの少し重心を下げた。全速で走るための準備だ。
「アルト!」
フリッツの合図でアルトが突っ込む。即座に反応した
すでにアルトは飛びかかっている。4mはあるであろう羆の
さらにダメ押しでフリッツが拳銃を連射する。5発の弾丸は全て頭に命中し、
「効いているな、どうだ?」
「クソ、なかなか隙を見せんな」
二人の狙いはヤツの足元にあるバックパックだ。これはスコーピオンがもともと持っていたもの、つまり中にはこの
フリッツは拳銃のシリンダーを外し、空になった薬莢を放り捨て、スピードローダーを使って素早くリロードを行う。二人と一匹は再び睨み合いの態勢へと入った。
「くそう、いつまでやればいいんだ」アルトは重心を低くし、
「怯むな。このまま押し続ければいずれは勝機が見えるはずだ」
今度は
え?本物の羆を撃ち殺せる銃だよコレ?気合いで耐えられるものなの?二人が一瞬、呆気に取られている間にも
銃弾をも超えそうなスピードで頭めがけて繰り出された
攻撃はかわしたが、しかしアルトはバランスを崩し仰向けに地面に倒れた。このままでは次の攻撃をまともに食らってしまう。フリッツの銃は弾切れだ。しかも、今から走り出しても間に合わない距離だ。万事休すか…!刹那、閃光の速度で、もう一人の乱入者が現れた。
「おりゃッ!」
フリッツの後方から加速しながら飛びかかったアリサが、
「ナイスキックだ、アズサ」
「ありがとう!ってフリッツさんじゃん!なんで?」
「こっちのセリフだ。こんなところにガキだけで来たら危ないぞ」
アルトが体勢を立て直す。三人まで増えた相手に、流石の
「オレグも居ただろ、どうした?」フリッツが拳銃を構えたまま聞いた。
「離脱させた。ホテルからは出たって聞いたよ」
≪ダナ、どうだ?≫
≪その娘の言う通りだよ。もう一人の男の子はホテルから離脱した。今、電車乗ってる≫
「なるほどな…。よし、三人なら行けるか。アズサ、アイツの足元にバックパックが見えるだろ?アレは——」
フリッツと視界を共有しているダナは、アズサに釘付けになっている。この娘も良いな…ちょっと若いが、それゆえにしなやかで、健康的な身体…この娘に罵倒されると考えたら…
「いかん、仕事中なのに興奮してきた」
煩悩を振り払って、ダナは集中しようとする。それにしても、これがフリッツの視界だというのが惜しい。公衆の監視カメラだったらハックして録画をもらうところだが、人の視界ではそうもいかない。どっちだろうと犯罪ではあるのだが、公共のカメラ映像を勝手に拝借してもほとんどばれることはないし、軍警ごときが私の尻尾をつかめるとは思わない。だが、フリッツは別。彼の
二人と一匹はにらみ合う。仕掛けるタイミングを常に探りながら、ゆっくりと間合いを詰めていく。
アルトがほんの少し重心を下げた。全速で走るための準備だ。
「アルト!」
フリッツの合図でアルトが突っ込む。即座に反応した
すでにアルトは飛びかかっている。4mはあるであろう羆の
さらにダメ押しでフリッツが拳銃を連射する。5発の弾丸は全て頭に命中し、
「効いているな、どうだ?」
「クソ、なかなか隙を見せんな」
二人の狙いはヤツの足元にあるバックパックだ。これはスコーピオンがもともと持っていたもの、つまり中にはこの
フリッツは拳銃のシリンダーを外し、空になった薬莢を放り捨て、スピードローダーを使って素早くリロードを行う。二人と一匹は再び睨み合いの態勢へと入った。
「くそう、いつまでやればいいんだ」アルトは重心を低くし、
「怯むな。このまま押し続ければいずれは勝機が見えるはずだ」
今度は
え?本物の羆を撃ち殺せる銃だよコレ?気合いで耐えられるものなの?二人が一瞬、呆気に取られている間にも
銃弾をも超えそうなスピードで頭めがけて繰り出された
攻撃はかわしたが、しかしアルトはバランスを崩し仰向けに地面に倒れた。このままでは次の攻撃をまともに食らってしまう。フリッツの銃は弾切れだ。しかも、今から走り出しても間に合わない距離だ。万事休すか…!刹那、閃光の速度で、もう一人の乱入者が現れた。
「おりゃッ!」
フリッツの後方から加速しながら飛びかかったアリサが、
「ナイスキックだ、アズサ」
「ありがとう!ってフリッツさんじゃん!なんで?」
「こっちのセリフだ。こんなところにガキだけで来たら危ないぞ」
アルトが体勢を立て直す。三人まで増えた相手に、流石の
「オレグも居ただろ、どうした?」フリッツが拳銃を構えたまま聞いた。
「離脱させた。ホテルからは出たって聞いたよ」
≪ダナ、どうだ?≫
≪その娘の言う通りだよ。もう一人の男の子はホテルから離脱した。今、電車乗ってる≫
「なるほどな…。よし、三人なら行けるか。アズサ、アイツの足元にバックパックが見えるだろ?アレは——」
フリッツと視界を共有しているダナは、アズサに釘付けになっている。この娘も良いな…ちょっと若いが、それゆえにしなやかで、健康的な身体…この娘に罵倒されると考えたら…
「いかん、仕事中なのに興奮してきた」
頭をぶんぶん降って煩悩を振り払って、ダナは集中しようとする。それにしても、これがフリッツの視界だというのが惜しい。公衆の監視カメラだったらハックして録画をもらうところだが、人の視界ではそうもいかない。どっちだろうと犯罪ではあるのだが、公共のカメラ映像を勝手に拝借してもほとんどばれることはないし、軍警ごときが私の尻尾をつかめるとは思わない。だが、フリッツは別。彼の攻性防壁を突破するのは生半可なことではないし、第一、そんなことやったら後で殺される。
≪——ダナ、おい、聞いてるか≫
「はいはいはい!ごめん何!?」マズい、ホントに集中しないと。
≪もう飲み込ませた!起爆してくれ!!≫アルトからの通信が飛んでくる。え、もう?そんなに長く妄想してたかな?
「分かった、3カウントで起爆する」いや、こいつらが素早すぎるんだな。アルトが
「1」
≪2≫フリッツが携帯式のバリア発生装置をアルト向かって投げつけた。
≪3——!≫
起爆の直前にアルトが自分のバリアを展開させると、同じタイミングでフリッツの投げた方も展開する。二つのバリアがぶつかり合った瞬間に、アルトは
「いてて…二人とも大丈夫か」アルトが体をさすりながら立ち上がる。
「オーライだよ。何とか受け身が取れたね」アズサも同様に立ち上がった。毛先が少し焦げてしまったのを気にしている様子だ。
「行き当たりばったりだったが、うまくいったな。上のに比べて爆薬の量が抑えめだったのが幸いした」フリッツは座ったままだ。鉄のボディに少し煤が付いている。「ダナ、
≪木っ端みじんだよ。データを取るのは不可能だろうね≫
「だそうだ。残念だったな、アズサ」
「今回は、五体満足でアイツを倒せた時点で文句なしですよ」
「そうだな…よし———」フリッツは立ち上がる。「車まで引き上げよう。お前らも来い」
「りょーかい」
「オレグにも無事なことを連絡してやれ。それと、場合によってはローガンたちのサポートにも入ってもらうからな」
3人は出口に向かってもと来た道を歩き出す。
ダナはフリッツの視界を通して、上着を脱いで露出度が増したアズサの身体を凝視し続けていた。
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