スキル【神対応】で異世界無双 ~使えないスキルだからとクラスメイトたちからハブられたけど、なんか日本の神様たちが俺のことを助けてくれるので異世界でも余裕でした。~
木塚 麻弥
第1話 異世界転移と神対応
気付くと俺は、真っ白な空間に立っていた。
周りにはクラスメイトたちもいる。
「こ、ここは?」
ここがどこなのか、どうしてここにいるのか全く分からない。そしてここに来る前の記憶も、なぜか曖昧だった。
「
記憶を呼び覚まそうとしていたら、幼馴染の
「身体に異常はなさそうだけど……。咲良は、ここに来る前の記憶ってある?」
「ない。気付いたらここにいた」
咲良もそうみたい。周りにいるクラスメイトたちもみんな狼狽えているから、俺や咲良と同じような状況なんだろうな。
そんなことを考えていると、この白い空間のどこかから声が響いてきた。
⦅やぁ、異世界から来た諸君。はじめまして⦆
耳で聞くというより、頭に直接響いてる気もする。初めての感覚でちょっと気持ちが悪い。
咲良を含めたクラスメイトの何人かが軽くパニックになりかけていた。だけどこの頭に響く声の主は、俺たちのことなんか気にしていないように話し続ける。
⦅僕は君たちがいた世界でいうところの、神って存在かな。すごく偉いんだよ⦆
「あの……。もしかしてこれは、異世界転移ってやつですか?」
学校に小説を持ってきて、それを休み時間に読んでるオタクの山田が自称神に質問をする。
異世界転移?
アニメとかで流行ってるやつ?
⦅そー! 知ってるんだ。話が早いね⦆
山田の質問は肯定された。彼を含めた何人かの男子たちが盛り上がってる。
俺たち、神を自称する存在に空間へ連れてこられたってこと? 勝手に連れて来られて、なんで山田たちはあんなに喜んでんの?
⦅君たちにお願いしたいのは、この世界にいる『
モンスターを百体倒せば元の世界に戻してくれるらしい。
⦅もちろん君たちには、異世界転移でおなじみの
この発言を聞いて、山田たちはそれまで以上に盛り上がっていた。
アレって何?
⦅それじゃ『固有ギフト』をあげるから、こっちに並んでー⦆
ぼんやりと白く輝く球体が現れた。
その前に、山田が真っ先に立つ。
彼の後ろにも何人かが並んでいった。
「そ、蒼汰くん。どうする?」
「わからない。とりあえず事情を知っていそうな奴らに
俺と咲良も列に並ぶ。全員が一列に並ぶと、球体がいっそう明るく輝きだした。
⦅それじゃいくよ。まずは君、山田
「は、はい!」
球体の問いかけに山田が応えると、球体は様々な色に変化し始める。
少しして、その色の変化がピタッと止まった。
⦅君にあげるのは──これ! 『
よくわからないが、すごいことらしい。
山田や、彼の周りにいる奴らが騒いでいた。
それから球体は、並んでいる生徒たちにギフトとやらを与えていった。
与えられたギフトは『
できれば強い能力が欲しいなと思いながら列に並んでいると、俺の番が来た。
⦅
俺の前にある球体が輝く。
その色の変化が、落ち着いてきた。
⦅君のギフトは『神対応』だ!⦆
「……神対応?」
神対応って、あれだよな。アイドルとかが、ファンを喜ばせるためにやってくれる、すごい丁寧な対応のことだよな?
クレームが入った時に、その対処の仕方でクレーマーをリピーターに変えちゃうようなのも、たしか神対応って言われてた気がする。
俺がもらった能力は、
「あの。神対応って、どんな能力が使えるんです?」
⦅んー。悪いけど、よくわかんないんだよね。このギフトを見るのは、僕も初めてだから。ちなみにギフトの説明には『
DIG……。なんだそれは?
DIYなら『Do It Yourself』で、自分で何かを作ったり修理したりすることだけど……。
Gって、何なんだ?
⦅この空間でギフトは使えないから、僕の世界に行った後で試してみてよ⦆
「も、もしかして。困ったことがあった時に神様──つまり貴方が俺を、助けてくれる能力だってことは?」
⦅あはははは。ないない! それはないよ。だって僕、この世界の唯一神だよ? これでも忙しいからさ。君のピンチに、いちいち駆けつけてあげられないよ⦆
「そ、そうですよね……」
俺が思いついた一縷の望みは、儚く散った。
──***──
その後、俺は薄暗い森の中にいた。
クラスメイトたち。特に事情を分かっていそうな山田とは、できるだけ一緒に行動すべきだと思っていたのだがけど……。
『神対応って、要は交渉術だろ? この世界の魔物が人間と話せるかわからないけど、交渉術なんて絶対に役に立たないだろ。役立たずは別行動でお願いしますよ』
オタクの山田にそう言われ、俺はグループからのけ者にされた。
いつも俺と一緒に遊んでた奴らも、俺から距離を置いた。山田のグループから追い出されるのはマズいと考えたからだろう。
そうなったのは自称神の言葉が原因だった。
『ちなみにこの世界で死ねば、もとの世界に戻れないから。十分に気を付けてね』
自称神はそう言っていたんだ。
ここで死ねば、それは本当に死ぬってこと。
それから、こんなことも。
『一般の魔物なら、ギフトを持つ勇者の君たちは負けないよ。でも、害亜は魔物の何十倍も強い。ギフトの力を最大限発揮しないと、君らでも簡単に死んじゃうから』
若干ゲームの世界のようだと浮かれていたクラスメイトたちも、これを聞いて考えを改めさせられた。無理だ、と絶望する奴もいた。そんなクラスメイトたちを落ち着かせたのが、三つのギフトを得た最強候補。山田だ。
彼は異世界転移とかの知識もあるようで、なにを成すべきか理解していた。だからクラスメイトの大半が山田のグループに入ろうとした。
もちろん俺も。
しかし俺はそこに入れてもらえなかった。
すると自称神は、グループごとに転移先を別けると言い出しやがった。効率よく害亜を殲滅させるためらしい。
効率よく活動できるのは力があるやつだけだ!
ひとこと文句を言ってやろうと思っていたのに、その前に
「俺と一緒で、本当に良かったの?」
「だって蒼汰くんひとりじゃ危なそうだったんだもん」
この場には咲良もいる。
彼女は俺のグループに入ってくれた。
ふたりだから、グループじゃなくてペアかな。
神対応なんていう意味の解らない能力しかない俺は、ひとりでも仲間がいてくれることが嬉しくなっていた。
嬉しくなったけど、同時に焦りも感じている。
咲良がもらったギフトも戦闘向きではなかったから。
彼女のギフトは『
この場には戦えないギフトを持った人間しかいない。
もちろん武器も防具もない。
高校の制服を着た男女がいるだけ。
ここは、いかにも
そして当たってほしくない俺の予感は、見事に的中してしまう。
遠くの方から巨大な何かが、木々をへし折りながら進んでいるような音が聞こえてきた。
「蒼汰くん。い、今の、聞こえた?」
「あぁ。少し、ヤバいかも……」
音がこちらに向かってくる。
それは俺たちの前に現れた。
瘴気を纏った、四足歩行の巨大な恐竜。
本能でコレが、
同時に生身の人間が勝てる相手じゃないってことも理解した。どう足掻いたって無理だ。
「そ、蒼太くん。これって──」
咲良が俺の後ろにピッタリくっついてきた。彼女の身体は小刻みに震えている。顔には絶望の色が濃く見えた。
アニメの主人公とかなら、ここでヒロインである咲良を守るような言動をするんだろうな。でも残念ながら、俺には使えない
咲良のギフトである
そんなことを考える余裕があった。
絶望的な状況過ぎて、逆に諦めがついた。
だから俺は、非常に冷静だった。
だって、どうしようもないから。
現れた害亜は少しの間、俺と咲良の様子を伺っていた。敵か獲物か、確認していたのだと思う。
このまま何もせずに立ち去ってくれと、そんな無理なことを強く願った。
でも俺たちは害亜に獲物だと認定されたみたいだ。
害亜がその巨大な口を、思っていたより数倍大きく開ける。口の奥には、ここに来る途中に喰ったのであろう獲物の残骸が見えた。
数秒後、俺もあんな感じになるらしい。
どうしようもない。
何も出来ない。
でも最後に少しくらいは、カッコつけたいって思った。
高校までずっと一緒にいた咲良。幼なじみってポジションに満足して、自分の思いを告げることも無く、ダラダラと関係を維持してきた。
最後だから。
害亜から視線を外し、それに背を向ける。
咲良を害亜から守るように抱きしめた。
「咲良。俺はお前が好きだった」
ずっと好きだった。
もっと早くに告白しておけばよかった。
そしたら咲良の返事も聞けたかもしれない。
だけど、そんな余裕はなさそうだ。
強く咲良を抱きしめる。
あぁ……。
ダメだと思うけど、神様。
助けて。
──ガッ
短く悲鳴のようなものが聞こえたあと、ドサッと何かが落ちる音がした。
いつまで経っても、俺たちが害亜に喰われることはなかった。
「よもや我が別世界に召喚されることがあろうとはな」
背中の方から声が聞こえた。
可愛らしい女の子の声だ。
恐る恐る振り返ると、そこには日本刀を持った少女がいた。とても綺麗な着物を纏っている。
その少女が、俺と咲良に近寄ってくる。
「我が名は
彼女の背後には、一切の淀みがない切り口で頭部を切断された害亜が、静かに横たわっていた。
「あめの……。あの、なんて?」
「天目一箇神と言ったのだ。お前が我を、呼んだのであろう」
「俺が!?」
「左様。さすれば『助けよ』という願いは叶えた。よって我は、コレで帰るぞ」
そう言ったかと思うと少女の身体は、花が散るように消えていった。
後に残されたのは俺と咲良。
それから、害亜の死体だけ。
「な、なんだったんだ? いや、でも……。とりあえず、助かったんだよな」
「蒼太くん」
「さ、咲良。よくわかんないけど、なんか助かったみたい」
「そうみたいだね。と、ところで蒼太くん。さっき言ってたのはほんと?」
「さっきの?」
「わ、私を、好きだったってこと」
……聞こえてたんですね。
まぁ咲良への最後の告白として、聞こえるように言ったつもりでしたが。
「好きだった──ってことは、今は違うの?」
少し目を潤ませながら、咲良が俺を見上げてくる。
それが可愛くて仕方ない。
「違わない!」
いつか咲良に告白したいと考えたことはある。告白する場所とかも妄想した。当然その中に、巨大モンスターの死体がある場所での告白なんてのはなかった。
でも俺は、今が
「俺は昔からずっと。もちろん今も、咲良のことが好きだ」
俺は害亜の死体から濃い血の臭いが漂ってくるこの場で咲良に告白した。
「わ、私も!」
咲良に抱きつかれた。
彼女のふわっと香るいい匂いで、害亜の血の匂いが薄れる。
これって……。
オッケーってことだよな?
確認のため、咲良の身体に手を回す。
初めはビクッとした咲良だったが、すぐに俺の身体に頭を預けてきた。
これはもう間違いないですね!
異世界に来て、彼女が出来た。
異世界バンザーイ!
異世界最高!!
だけど問題もある。
「害亜を全部倒さなきゃ、元の世界に戻れないんだよな……」
俺は咲良とカップルっぽいことを沢山したい。デートもしたい。咲良の手料理を食べたい。互いの部屋に行って、ドキドキしたい。
ゆくゆくは咲良と──
俺は元の世界に戻りたいと思った。わけも分からず、いきなりモンスターに襲われる危険な異世界じゃなくて、安全な日本に戻りたい。
いや、絶対に戻ってやる。
咲良を抱きしめる手に、力が入った。
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