14 神盾と疑念
セイルが立ち去っていった方向を、アリサは頬を朱く染めながらぼうっとして眺めていた。
「アリサちゃーん!」
「きゃあ!……何すんのよクリスタ!」
後ろから抱き着いてきたクリスタに対し、アリサは咄嗟に重心をずらしてホールドを抜け出す。そして刹那の間に振り返ってクリスタを腰に乗せて足を股に入れて跳ね上げるようにし、投げ倒して組み伏せる。
鮮やかな手際に「Kabuki……」などという意味不明な声がどこからか上がったが、全く違う。Judoである。
「ぐふう……。それ、反則でしょ、やっぱ……」
股間を抑えて呻くクリスタ。
「今のは完っ全にあんたが悪い!」
アリサは先ほどとはまた違う理由で顔を真っ赤にする。
「で、何の用?」
ご立腹の様子であるアリサに、クリスタは少し怖気つきながら要件を伝える。
「……なんか、隊長が分隊長全員集合!だってさ。全く、何なんだか。」
「そう。じゃ、いくわよ」
「え、っちょ、まって」
「いいからいくわよ!」
♱
領主館の敷地内の一角に、
「この街はそれほど大きくはないのに、ほとんど情報が集まっていないわ。これ以上有益となる情報が手に入れられなかった場合、本日限りで捜査を打ち切りとし、明日の朝、この街を出ることになる。各自、分隊の皆に伝えて、準備しておいて。以上よ。解散!」
要約するとそんな感じであった。
♱
(怪しい……)
解散後、アリサは分隊の皆に与えられた部屋へ向かいながら、そう思っていた。
(まだこの街に来て捜査を始めてから一週間も経っていないのに、これで打ち切りは性急すぎる。何かが、おかしい)
その後、アリサは分隊の皆に要件を伝えた後にクリスタにも相談してみたが、
「まあ、少し早いかもしれないけど、隊長が言ってたことも事実でしょ?そこまで気にする必要もないんじゃない?」
と言われて終わりだった。
しかし、アリサは違和感を拭いきれずにいた。
(潜伏していた場合、情報が出てこないのは必然となるし、もし協力者がいるとしたら、もっと面倒なことになる……)
こんなときに、シュバルツがいたら――
そんなことを考えてしまい、アリサはブンブンと頭を横に振った。
そして、何故かセイル(イケメンver)の顔も思い出してしまい、さらに頭を勢いよく動かすアリサであった。
♱
その後捜査を続けたが、誰一人として核心を突く情報は得られず、打ち切りとなった。
翌日、
第二分隊長アリサ・アインハルトは、胸に一抹の不安と疑念を抱きながら、頭上の太陽を見上げ、歩き出した。
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