5.34.竜の山


 竜の住処へとたどり着いた。

 ここまで来るのに山を何個か越えたが、どちらかというと平原の方が多かったように感じる。


 そしてここは、山脈だ。

 鋭利そうな山が幾つも連なっていた。

 そして無駄に広く、デカい。

 空を飛ぶのであればこのような物は全く障害にならないだろうが、陸を歩く生物にとっては生と死の狭間を歩く結果になるだろう。

 山に入るのに勇気が必要だ。


 そんな山を遠目で見ているのだが、確かに大きな音が何度も聞こえてくる。

 どうやら竜が争っているらしい。

 これは昼夜問わず行われている様なので、夜もなかなか眠れないのだとか。

 そこは割とどうでもいい。


『で、その強い竜ってのは何処に居るんだ?』

『『『あっちでございます』』』


 そう言って、狐たちが一つの方角を指し示す。

 俺はその方角に歩いていった。


 体も大きいとの事なので、住処もとんでもなくデカいらしい。

 まぁそりゃそうだろうなと思いながら、歩いていると……。

 突然上空から何かがこちらに飛んできている音がした。

 それは風を切る様な音ではあったが、何度か翼が羽ばたかれる音が聞こえたのだ。

 恐らく竜だろう。


 いち早く匂いでも嗅ぎつけてきたのだろうか。

 あんまり戦いたくないのだが……。


『『『わあああ! 竜がきますぅ!』』』

『分かってるよ……』


 一々騒がないで欲しい。

 ただでさえ煩いのが背中に乗っているんだ。

 少し騒ぐだけでも結構耳に来る。


 とりあえず、俺はその音のした方角を見る。

 すると、やはりデカい塊がこちらに向かって飛んできたい。

 その姿は……竜であった。


 鋭い鉤爪、硬そうな鱗、大きな翼に大きな尻尾。

 どれをとっても俺だけでは勝てそうにない相手だ。

 まず大きさが違う。


 俺も他の仲間の中では大きいと言われるだろうが、比べる物を間違えてはいけない。

 今飛んできている竜はおおよそ二十メートルくらいはあるだろうか。

 対する俺は八メートル……くらい。

 普通に考えて勝てるはずがなかった。


 竜は俺の前まで来ると、翼を大きく羽ばたかせてその場に停止する。

 それによりとんでもない勢いの風がこちらに飛んでくるのだが、ここで俺は教えてもらったばかりの空間魔法を使用して、透明の壁を作り出す。

 それにより風は全く来なくなり、加えて相手と俺との間に壁を設けることが出来た。

 何かあっても、初撃くらいは防ぐことが出来るだろう。


「ギャアァジャア!」

『……おっ? リーダーになっても話の通じない奴っているんだな』


 今回は言っていることも全く分からなかった。

 何を言っているんだこいつは。

 普通だったらなんとなく言っている意味は分かっていたのだが……。

 今回に限ってはそれすらも分からない。


 だが、狐たちは何を言っているのかわかるようで、俺の背中で怯えていた。


『『『ヒエエエエッ』』』

『おい、誰か通訳してくれ』


 すると、冥が恐る恐る毛の中から顔を出して、通訳をしてくれた。


『く、食うぞ~って言ってますぅ!』

『それ大分はしょってね?』


 こいつ通訳へたくそか。

 でも敵意を向けているという事は分かったな。

 じゃあ俺も適当にあしらって目的の場所まで向かうとしよう。


『風神、手加減バージョン』


 今は背中に狐が乗っているので、雷魔法が使えない。

 なので、身体能力強化の魔法と風魔法だけを使って、竜の翼を狙い撃つ。

 その時に空間魔法を解除したので、突風がこちらに飛んできたが、それでも風神はまっすぐに飛んでいった。


 相手はその攻撃が見えなかったのか、回避する動作もない。

 風神はそのまま翼を切り裂き、風を受ける事をできなくさせた。


「グオオォオオ!?」


 空を飛び続けることが出来なくなった竜は地面に落下する。

 その勢いは結構強かったのだが……おそらく元の体重が凄いだけなので、これくらい普通だ。

 割かし低空飛行していたし、頑丈な鱗を持っていそうなので怪我などはしないだろう。


 てか結構普通に攻撃効いたな。

 俺はそれに驚きである。


『じゃあ行くか』

『『『うええええええ!? 何してるんですかオール様ぁあああ!』』』

『え、だって敵意向けてたんだろう?』

『『『いやそうですけど! そうですけぉお!』』』

『じゃあいいじゃん』


 敵意を向けてくる奴に慈悲などいらない!

 俺はそれをこの短い人生の中で既に理解した。

 どんな強敵であろうと、仲間を傷つけるのは許さん!

 ふふん!


 よし、さっさと行こう。


 何やら後ろから咆哮が飛んできていたが、地面に落ちた竜程足の遅い奴はいない。

 俺はすたこらさっさとその場を後にした。

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