4.16.道案内
『……なんっだこりゃ』
「供物でっす!」
朝……。
見張りをしていたら、フスロワが馬車に大量の食材を持ってやって来た。
肉は勿論野菜やキノコなど様々だが……。
こいつは何してんねんマジで。
『お前これ何処から持ってきた』
「何処って……集落の備蓄庫からですが」
『…………』
俺はフスロワの上に手を置き、押し潰すように力を籠める。
意外と耐えるフスロワに驚きはしたが、とりあえずもう少し力を入れた。
「ぬぉおおおおおお!!?!?」
『馬鹿が! 大量の食料が消えて集落のダークエルフが騒がないとでも思ってんのか! 俺はお前に昨日聞いたぞ! 俺たちの事は黙ってるってな! なのに俺たちの存在が間接的にバレるような事してんじゃねぇよ!!』
「あああああそうですねえ!! すいませんっしたぁあああ!!」
『うるせぇ!!』
「あああ──」
ズン。
こいつとは出来るだけ早く離れたほうがよさそうだな。
とりあえず子供たちを呼んで、これ食べてもらうかぁ。
俺も食べよう。
子供たちは知らない食材に興味津々だったが、一匹として茸は喰わなかった。
まぁだろうな。
俺も茸は食べたくないから、これだけは残しておこう。
しかし……結構な量だ。
俺がいても食べきれない程にある。
なので、残った物は無限箱に仕舞ってしまいましょう。
ここで食料が手に入ったのはありがたいが、少し危険が増した。
ったく、良くあんな目立つ格好で付けられなかったものだ。
匂いではこいつ一人しかいなかったからな。
付けられてはいないはずだ。
『おい、さっさと案内しろ』
「はい了解です!」
潰した穴から元気に顔を出した。
もう少し力を入れておいてもよかったかもしれないな。
今日は俺が先頭をあるく。
小さい子供はガンマに乗っけておいた。
だが、何かが気に食わないらしく、小さい子供はガンマの毛をガシガシと噛んでいる。
痛くはなさそうではあるが、何故噛まれているか理解できていなさそうだ。
俺も分からん。
フスロワはジグザクに道を進んでいく。
これに何の意味があるのか聞いてみたのだが……。
「少し離れたところに見張りの場所があります。場所は僕も記憶していますので、その場所から見えないように木を影にして進んでいるのです!」
結構考えて歩いていたのね。
じゃあとりあえず、こいつについて行こう。
何かあったらすぐに殺せるようにしてな。
暫くジグザグに歩いていたが、途中からはまっすぐに歩き始めた。
もう警戒するものがないのかもしれない。
別に会話することもないので、ただ後ろを歩いていると、フスロワから声をかけてきた。
「いやぁ……。まさかこんなに早くフェンリル様とお会いできるとは思いませんでした。以前はオート様とお会いしたのですが、あのお方はフェンリルに一番近い存在で……」
『! おい待て。今、オートと言ったか?』
「はい。数年前にダークエルフの集落を通った際にお会いしたのです」
それならそうと……先に言えよ……。
阿保らし気に警戒しまくっちまったじゃねぇか。
……。
そうか。
お父さん……一度ここに来たことがあったのか。
だから南に行けって……言ったんだな。
「は! 僕としたことが……! お名前を伺っておりませんでした。よろしければお聞かせくださいますでしょうか?」
『……オールだ。オートの息子だよ』
「……通りで……。という事は、旅をしておられる理由は……」
『多分お前の想像している通りの事だ。俺たちは人間に負けて逃げてきた』
そう言うと、フスロワの足が止まった。
手を広げた状態で力を入れ、首を下に向ける。
心なしか黒い靄が足元に広がっているようにも見えた。
どうしたんだ?
するとフスロワが首をもたげながらこちらを向いた。
その眼光は今まで温厚だったフスロワの物ではない。
狂気に歪んだような、憎しみの籠った鋭く恐ろしいものだ。
しゃがれた声で、フスロワは喋り出す。
「やばり人間はクズでずね。己が利益の為だげに殺戮を繰り返ず。オート様がごぢらに来られだ時も同じ理由でございまじだ。僕は人間が許ぜまぜん。似だような姿ど言うだげで僕ば虫唾が走りまず」
今度はこちらを振り返り、言葉を続ける。
「何故守り神だるフェンリル様やエンリル様が逃げなげればならないのでじょうが。僕ばぞれが全ぐもっで理解でぎまぜん。死ぬべぎば人間共でず。同じ方法で殺じでやりだいでず。腹を割り、臓物を荒い流じ、皮を剥いで人間共の住む街に投げ入れでやりだいでず。ぞれは我々一族が常に考えでいる事であり、願望にございまず」
それを聞いていたガンマが、少し前に出てくる。
『兄さん、こいつ何言ってんだ?』
『……人間を恨んでるそうだ』
『へぇ……。考えは同じか』
だが、この恨み方は何か違う。
ただの恨みではない。
狂信……。
その言葉がこいつにはぴったりだ。
正直に言うが、流石の俺もここまでは考えていなかった。
こいつの考えには賛同できる節もある。
しかし……ここまでの事を本気でやろうとなどは思ってもいない。
まず、相対するのが嫌だからだ。
纏うオーラと狂信の妄言。
これだけで人間には有効なのではないだろうかと言う程に、恐ろしい。
「我々ば、いづでもフェンリル様……いえ、オール様の味方でず。人間を滅ぼず時ば、いづでもお呼びぐださいまぜ……。一族総出で、事に掛がりまじょう」
そう言いながら、オーラをしまって一礼をする。
再び上げた顔は、先程の温厚なフスロワに戻っていた。
「申し訳ありませんオール様。僕が案内できるのはここまでです」
『そうか。では、ご苦労だった。戻っていいぞ』
「はい! お気をつけて!」
そう言うと、フスロワは大きな木にするすると登って、来た道を戻っていった。
なんか……やばい奴に合ってしまった気がする。
ダークエルフってみんなあんな感じなの?
人間に恨みを持っているとかそういう次元じゃなかったぞ……。
こいつらとはあまり関わらない方がよさそうだ。
とりあえず、ここからも出来るだけ遠くに行こう……。
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