第7話 サッドソング

嘘がつけなくて彼女を失った

ずるくなれなくて金を失った

言い訳しなくて仕事を失った

明日が見えなくて家を失った


全て失ったのに涙も出なかった

そして少しは賢くなろうと思った


冬の夜空は満天の星で今にも泣きだしそうだ

外の空気は剰りにも澄んで全てが消え去りそうだ





嘘が上手くなり仲間を失った

少し ずるくなり愛を失った

言い訳が増えて時間を失った

明日が見えすぎて夢を失った


まだ失うものがあった事が分かった

そして もっと賢くなる事を誓った


梅雨の終わりは雲がいっぱいで何だか軟らかそうだ

河の流れは茶色に濁って心が洗われそうだ



もう何も失いたくはないと思った

だけど もう失うものは無いと悟った


夏の初めは日差しが強くて身体を過ぎ行きそうだ

部屋の空気はまだ湿っていて誰かが現れそうだ

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