第36話 ブーメランって素人がやると帰ってこないよね

 大方翔に服を選んでもらったあと、俺たちはサービスエリアに来ていた。

 

 ここに来るのが遅かったことと、服を選ぶのに時間がかかったことで見事に昼時を過ぎ、フードコートはおばちゃんたちの話す場所と化していた。

 俺はたこ焼き。翔はラーメンを購入し、空腹を満たすように腹に落とし込んでいく。


「いやぁー案外服で人って変わるもんなんだな」


「そうだね。ファッションはある意味自分だから、高められるところは高めていかないとな」


「お前のその上昇志向スゲーよ。敵どこにもいないわ」


 翔はただでさえ真っ裸でも「イケメンだぁ」と思うのにおしゃれも加えられたら誰も勝てない。

 それに比べて俺が真っ裸になれば即通報。これが普通である。


「いやさ、音羽も私服になると普段隠れてるオーラが全開で相当目立つんだよ。だから俺も頑張んないといけねーの」


「美男美女カップルは大変なんですねぇー」


 本心、「もっと大変になりやがれくそがぁ!」

 ただそんなことはもちろん言わない。思っても言わない。だって友達だもの。りつを。


「そんなこと言ったらお前はもっとやばいぞ。美少女としか関わりねーじゃん。夏休みも各々と出かけるらしいしな?」


「やめろなんだか俺がハーレム系主人公みたいになってるから。別にそんなんじゃねーから人目を気にする必要なんてないんだよ」


「今は、そうかもしれないけどさ、これからどうなるかわかんないじゃん?」


 そう言ってさりげなく俺のたこ焼きをつまむ。

 俺も仕返しとして、翔のラーメンの汁を半分くらい飲んだ。おかげで麺と汁の比が逆転。滑稽だぜ。


「いやそんなことはないだろ。俺はいい感じに暇な奴くらいにしか思われてねーだろ」


「……ほんと律ってラブコメの主人公だよね。ラストは嫌われるパターン」


「なんか言ったか?」


「全然言ってないけど?」


 さわやかな笑みを浮かべて、麺をすする。

 俺はもうすでに完食していたため、メロンソーダをちびちび飲みながらぼーっとしていた。


「翔って今年の夏休みは音羽とどっか行ったりすんの?」


「もちろん。部活がない日ならほぼ毎日会うかな」


「ほんとお前らラブラブだなぁー」


「といっても勉強会だし、イチャイチャするわけじゃないよ。図書室こもるし」


「いや真面目かよ! 全く、そんなんで夏休みエンジョイできんのか?」


 そう上から目線に言う俺だったが、実際は俺の方がエンジョイできそうな雰囲気ではない。というか、彼女持ちな時点で俺の負け確定。敗色濃厚。

 でも図書室にこもって勉強するとは、なんとも神カップルらしいなと思った。


 もはや熟年夫婦。


「まぁ一緒にいるだけでいいし、それに勉強は将来につながる」


「お前ってチャラそうな見た目しといて真面目だよな」


「失礼だなおい! まぁ律はラブコメの主人公みたいな見た目しといてほんとにラブコメの主人公だよな」


「ラブコメの主人公を悪口みたいに使うな。全ラブコメの主人公に殴られるぞ」


「こえーこえー」


 絶対思ってないだろその余裕そうな顔は。

 

 でも、俺も遊んでばっかいないで勉強をしなきゃいけないなと思う。もう高校二年生だし。

 白幡さんとも話したが、進路を決めていかなきゃいけない。時間は有限だ。それに、ここからはあっという間に時間が過ぎていくと聞く。

 

 まぁ、とりあえず今を楽しもう。楽天的な俺が降臨。


「律はさ、後輩とか白幡さん以外に加恋とは予定立ててないのか?」


 先ほどからやけに加恋のことを押してくる。

 諦めたとこいつにも、加恋にも言っているというのに。


「一応水着を買いに行く予定がある。まぁ何気に毎年暇だ暇だとか言って俺んちに来たりしてるんだけどな」


「ふーん……」


 俺がそういうと、翔は含みのある笑みを浮かべた。

 なんだかこいつにはすべてを見透かされているような気がしてならない。でも、俺には隠してること何にもないからノーダメだけどね。


「そうかそうか。勝負の夏休みってことか」


「は? 勝負の夏休みってなんだよ」


「人それぞれに、夏休みにはドラマがあんだよ」


「……お前よく恥ずかしげもなくそんなこと言えるな」


「恥ずかしくないからな」


 俺だったら恥ずかしくて逃げだしてるわ。

 ただしイケメンに限る、というやつかな。実は翔が言うとそこまで違和感はなく、むしろ若干感動してしまった節がある。


 イケメン恐るべし。


「まぁ俺は夏休み中より夏休み明けの方が楽しみだ」


「お前相当物好きだな」


「だって夏休み後は何気にみんな変わってたりするじゃん? その変化が面白いんだよ」


 やっぱり物好きだなこいつ。

 なんか夏休み明け教室を余裕そうな表情で見ている翔の姿が容易に想像できた。恐ろしい。


「だから、お前が夏休み明けどうなってるか、楽しみだ」


 そういった後、箸をおいて「ご馳走様」といった。


「人はそんな簡単に変わんねーよ」


 俺がそういうと、翔がにやりと不敵な笑みを浮かべて、こういった。



「ブーメラン」



 わけがわからなかったのだが、とりあえずトレーを店に戻しに行った。

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