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「はぁ、なるほど。それは厄介ね」
「とりあえず今は香を焚き締めた作務衣を着る様に言っているし、寝る時にはそれなりの香を焚いているから大丈夫だと思うが、出来れば時間はかけたくない」
「そうね、既に理は一つ破られているわけだし、今後どうなるか予測がつかないものね。いいわ、私の方でも当たってみるから何かあればすぐにでも連絡入れてあげる。それじゃ、またね」
二人の姿が見えなくなると
「はぁ、全く、一体やつは何処に居るんだ」
そう呟いて、ぼんやりと考え込んだ後、やれやれとばかりに再び掃除を再開した。
以前と同じ突然の訪問だったが、大きく呼び声を上げなくても玄関のガラス戸が開く。
「ふふっ、上々ね」
廉然漣は嬉しげに笑って何の躊躇もなく中に入っていった。
「あぁ、よかった。あそこならと思ったけど、思った通りで安心したよ。……まさか、
「
「とりあえず、入ってよ」
前と同じく表情には現れていないが、ホッとしている様子は見て取れて、
躊躇なく先に入った
「もう、やだ! 相変わらず陰気で薄暗い部屋ねぇ。たまにはお日様の力をいただかないと潰れちゃうわよ」
後から入ってきた
「そう言う貴方も相変わらずですね。人の事を全く考えない自己主義者」
「だって私は私だもの。私の利にならない他の人がどうなろうと知ったこっちゃないわ。何よりどうして私が人間ごときの事を考えて行動してやらないと駄目なの?」
高く笑って言う
「貴方はそうでしょうね、俗世にどっぷり浸かりきっているというのにそう言う面だけはそのままなのですから。人として暮らしていくのなら、人を学んで、もう少し普通を謳歌してみてはいかがです」
「普通を学ぶ? 私が? ふふっ、面白い冗談ね。でもまぁ、どんな物事にも向き不向きってものがあるのよ、だから仕方ないじゃない?
「貴方のように、ですか? 御免こうむります」
相変わらず面白味のない子だと肩をすぼめ、
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