第46話 わかったのだ、それが

「覚悟、決まった?」

「……ああ」

「……うん。いい顔をしているね」

「いい顔かどうかはわからないけど、何がしたいかは決まった」

「そんな君に特別サービス、僕の知識を伝授しよう」

「知識?」

「―—を得た勇者は姫と結ばれ国は消滅を免れる」

「それは何のあれだ?」

「歌だよ。僕が生涯かけて紡いだ歌」

「あなたは詩人だったのか?」

「うん、世界を旅して回る詩人だった。柱に選ばれて旅して回って、その後代替わりでも旅して回って、きつねくんと出会って、歌を聞かせたんだ……代替わりのためにね」

「……へえ」

「自分勝手だと思う? そうだよね。でも……当時の僕はそうするしかなかった、絶望していたって言ったら言い訳になっちゃうけどね……」

「……」

「だけど、世界に立ち向かえるチャンスはそれしかない。ベタだけど、ベタなのが世界。お約束が働くのが世界なんだ。無慈悲なように見えて、案外ザルだったりするものだからね」

「それが本当かどうかはともかく、やってみる価値はあるな……」

「でしょう。まあ、やってみたまえよ」

「わかった」

「さて、そろそろ時間だ。僕はここでお別れ。ほとんど話もできなかったけど……僕はきつねくんだし、きつねくんは僕だ。この空間が消えても……ずっと、応援しているから」

「ああ……ありがとう」

「いいえ。……それじゃあ」

 世界が、切り替わる。

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