第24話
サイトを開くと、この場にそぐわないほどの可愛らしいフォントで、「レンアイ履歴」という文字が躍り出てきた。
そのタイトルの下に、
小さく「西山高校編」と書かれている。
この高校だけじゃなく、他の色んな高校でもこの放送は行われているのだろうか。
レンアイ放送という都市伝説を利用したテロ行為か?
そんなことを頭に浮かべながら、
私は画面をスクロールした。
「C組」という欄を開くと、
ずらっと生徒の名前が並んでいる。
一番下まで見ると、
しっかり渡辺瑞季の名前もあった。
何の迷いもなく自分の名前をタップすると、[42番 渡辺瑞季:生存(未放送)]という情報のみが出てきた。
思ったよりも情報量が少ない。
でも、それもそのはずだ。
ここに好きな人の名前なんてものが書かれていたら、両想いか片想いかが放送を待たずにハッキリしてしまう。
そうすれば、このゲームの心理戦的部分が無くなってしまい、面白みに欠けるのだ。
自分のことを好きな人なんていないと楽観視し、忍び寄る殺意に気付かない者。
絶対に両想いだと信じ込み、裏切られて殺される者。
両想いになれるはずないと悲観的になり、自分のことを好きな相手を殺めてしまう者。
それが、レンアイ放送の面白さなのだ。
恋愛関係にあっても、
所詮赤の他人でしかない。
人の気持ちを推し量ることなんて出来やしない。
だからみんな、
勝手な思い込みで死んでいく。
主催者は、
それが面白くてやっているのだ。
気付いて、悔しくなった。
そんな娯楽に私たちを巻き込む主催者のことも、簡単に踊らされている私のことも。
そして、その意図に気付いてしまった自分のことも怖くなった。
どうして主催者の気持ちを理解してしまったのだろうと。
私は、だんだんとレンアイ放送の主催者に近づいてしまっているのかもしれない。
それとも、元から近かったのだろうか。
それは、分からない。
自分が主催者と近いかだなんて、
分かりたくもないけど。
今は、自分が生きることだけを考えなきゃ。
そう決意して、ゆっくりとスクロールし「榊原悠人」をタップした。
榊原の情報は、私と全く同じだ。
[15番 榊原悠人:生存(未放送)]
とだけ書かれていた。
ひとまず、榊原は生きている。
その情報に安堵すると同時に、今からこれを「死亡」に変えてしまうことに恐怖を感じた。
自分の身を守るためとはいえ、
人を殺すのだ。
A組1番の青木裕太をタップすると、
[1番 青木裕太:死亡(失恋)
好きな人→12番 古手川七菜]
という情報が浮かび上がる。
もし私が榊原を殺してしまえば、ここには(他殺)などと書かれてしまうのだろうか。
もしかすると、「42番 渡辺瑞季により」なんて文言が加えられてしまうかもしれない。
榊原を殺すことは、生きるためには仕方のないことだと分かっていても、それがこうして記録として残ることが怖かった。
結局、私は自己保身しか考えていない。
なんだかとても、情けなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます