第2331話 70枚目:問題対処

 こう……でかい看板や鉄骨を、金属の金槌で連打しているような音。というか騒音。金属の塊同士をぶつけ合わせているのだから当然なのだが、それに対して最初に我慢の限界を迎えたのは、意外な事に「第四候補」のところのカナさんだった。

 式神使いで陰陽系の彼女は青筋立てつつにっこり笑顔になると、「呼び鈴」に対して式神を殺到させたのだ。式神といっても本体はただの紙なので、最初の数体は飛び跳ねる勢いでバラバラになっていた。

 ただそれでも、何十何百と嗾ければ話は別だ。その内足元に何体かの式神が滑り込み、靴を履かせたようにして、完全にその体を持ち上げたのだ。


「あれっ!? カナ、ちょ、いつの間になにしてんの!?」

「ふふ……あんまりにも無邪気で、こちらの遊びに混ぜてほしそうでしたので、手番を渡して差し上げようかと」

「待って手番ってなに。ねぇカナなにするつもり!?」

「ですから、手番を。このように」


 その時点で「第四候補」が気付いたのだが、時すでに遅し。気のせいかわたわた慌てているような動きをしていた「呼び鈴」を――召喚されたばかりのゴーレムモンスターに、突っ込ませた。

 流石に巨人系モンスターは、戦うのは楽だけど素材の使い道が限られる。なのでちょっと切断属性の攻撃が通りにくくなるものの、気が付けばなくなっている素材代表な鉄や銀で出来たゴーレムに切り替えたんだが、金属同士が派手にぶつかる凄まじい音が響き渡ったんだ。

 先ほどまでの騒音も相当だが、それを上回る轟音に、耳の良いルチルはノックダウン。私やエルルも一瞬動けなくなったって時点で耐えられるものじゃないんだよ。なお、サーニャとルウは元気だった。マジで?


「っ、く……! なに、ごとですか、「第四候補」!?」

「俺じゃないよ! いや責任問題考えたら俺になんのか!? いやまぁ俺でいいや、戦闘準備! カナが「呼び鈴」をゴーレムに叩き込んだ!」

「あー、なるほどのう。さっきからうるさいばかりでお代わりが来ぬなと思っておったんじゃ。仕事が終わったらさっさと投げつければ良かったんじゃな」

「触ったらそれだけで即死しちゃうのに~、どうやって触るのよ~?」

「その場で飛び跳ねておるんじゃろう? 浮いてる間にこう、後ろからじゃな」

「なるほど。ルージュ、回収した資源の一部を使って、頑丈さだけを追求した鉄の棒を作れますか。「第二候補」用のサイズで」

「Σ(゜□゜)(えっ? あの人型相手ですよね? 重さがすごい事になりますよ?)」

「……「第三候補」のマーレイにも出来そうであるし、そも、その武器で殴れば問題なさそうであるがな」


 途中で別の話が挟まったが、その間にゴーレムは構造物と同じ鎧を着こんでいた。ただし大きさがそのまま面積に反映されるのか、前後の胴部分と、肘および膝から先しか無かった。

 それだけ開いてれば攻撃を通すのも楽だ。ゴーレムだから強い力で殴ればそこから先が吹き飛ぶし。手順自体は慣れてるのもあって、すぐ終わった。

 の、だが。


「のう。ところで「第三候補」」

「さっきの指示を聞いていなかったんですか? 頑丈な鉄の棒は作って売りますから、それを持って行って下さい」

「そちらこそ、それに続いた「第一候補」の言葉を聞いておらんかったのか?」

「……。ぬ。まさか我のせいか」

「まぁ責任が無いとは言えないわね~」


 本人が一泊遅れて気付いた通り、「第一候補」が余計な事を付け加えたせいで、「第二候補」がルウを連れて行こうとしたので断固拒否する。絶対に嫌に決まってるだろうが。ルウは火力こそあれだが、それは耐性や防御力を全部捨てているからなんだぞ。そしてその捨てた中には速度も入る。

 つまり、周りが守らないといけない、重戦士もしくは大砲タイプのアタッカーだ。「第二候補」とその連れ(弟子)みたいな、攻撃も防御も回避もカウンターも全部できるのが大前提、という感じの戦闘力は無い。

 なおかつここまで見た感じ、「第二候補」とその連れ(弟子)達は周りに気を配るって事が無かった。平気で攻撃範囲に入ってくるし、魔法の射線にも割り込んでくる。本人達は「それを避けられる」前提で動いてるんだろうが、正直やり辛い。いや、やり辛かった。


「うちの子をすぐ暴走する戦闘狂に任せられる訳がないでしょう。放っておくどころか殺しても死なないような戦闘狂集団と一緒にしないで下さい」

「目指すところは間違っておらんが、相変わらず「第三候補」は辛辣じゃのう」

「当たり前でしょう? 自分から射線に割り込んでくるんですから。途中から「当てていい。むしろ積極的に巻き込んで良し」って指示を出したぐらいなんですが?」

「……流石にそれは聞いておらんのじゃが?」

「実際当たって無いから問題ないんでしょう? そして「第二候補」。あなた自身がその直後に「ようやく動きが良くなってきたのう」って言ってましたし?」

「なんと。……もしや余計な気を遣わせておったか?」

「えぇ。思いっきり。その気遣いを欠片も残さず投げ捨ててようやく肩を並べられるような集団に、うちの子は預けられません」


 ちなみに私だけではなく、「第五候補」も近接職だったらしい側近の人に同じ指示を出していたし、「第四候補」は魔法メインにして近寄るなと指示を出していた。「第一候補」は最初から接近戦をしない構えだったので、気付いていたかどうかは分からないが。

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