第1913話 63枚目:「迷子」対応

 1時間後。


「ものすごい量を食べたわね」

「まぁ、お風呂にも入ってくれましたし、目的は達成できたでしょう」

「結局汚れが落ち切らなかったメェ」

「そう簡単にいくものではないでしょうし、多少なりと満足して頂けたのなら成果かと」


 いやー、ものすごい勢いで食べて行ったよね。私も料理を作る方に回ったから。ルフィルはお風呂の担当だった。カバーさんは魔法でそれぞれの補助をしつつ、食べ物と、食器含む道具、机や椅子を始めとした家具、そして私達「生き物」は違うものだと教えていたようだ。

 実際どれくらい理解していたかは分からないが、まず総菜パンを自分の手で持たせると、それ以降は自分で持っていたし。スープや麺類を食べても、スプーンやフォークは食べなくなっていたから、「食べ物以外は食べちゃダメ」というのは通じた筈だ。

 なお灰色の子供は、竜族の大人でもそこまで食えないぞ、という量を食べてお風呂に入り、ルフィルに洗ってもらいながらたっぷりぬくぬくしていって、ついでに服も私がサイズを直した新しいものを着たところで、幻のように消えてしまった。


「庭主様、次はルフェルもお願いしますメェ。1人じゃちょっと手が足りないメェ」

「調理班も増やした方がいいわね、これ。今回はギリギリ間に合ったけど、こういうのって回数が重なっていくたびにハードルが上がるやつじゃない?」


 と、ルフィルとソフィーナさんから声が上がる。

 あぁ、そうだな。私もそう思うよ。


「完全に同意です。……が。問題は、こうして素直に「お腹をすかせた迷子」と定義して、認識して、そういうように扱ってくれる人材というのは、簡単には増やせないんですよ」

「そうですね。特に『勇者』の方々は、少なくとも直接相対したらその正体に気付いて、無視できなくなるでしょうし」

「最悪、話を聞いた時点で何か、神々側から反応があるかも知れないから、秘密にしないと行けないんですよね。徹底的に」


 思うんだが、ダメなんだ。


「お忘れかも知れませんが、今回啓示をくれたボックス様、“神秘にして福音”の神は、「世界の完成後に外からやって来て受け入れられた神」です。この世界にルーツを持たない、かつ、限界はあるとしても、世界が無くなっても問答無用では消滅しない。そういう神格なんですよね」

「そうですね。そしてその前提で考えると、最悪、この手助け自体が「裏切り行為」として捉えられてしまいかねない。そのリスクは認識しておいた方が良いでしょう」


 だから私も、連れてきてもらったのはルフィルだったんだし。ボックス様の世界で生まれて、ボックス様の縁で「この世界に来た」存在を。……テイム状態にはあるが、その使用スキルは【契約】系列であり、扱いとしてはモンスターとなる。

 エルルとサーニャは当然、竜族部隊の人達は丸ごとアウトだと思っていいだろう。少なくとも、もう少しあの迷子がこちらに寄ってきてくれないとダメだ。そしてルシル達、使徒生まれもマズいだろうな。

 もちろん召喚者プレイヤーだって、この情報を知る相手は限定しなければならない。最重要機密、それこそルールの存在ぐらいの扱いをしないといけないだろう。そしてその上で、少なくとも「第一候補」に知らせるのは最後だ。


「とりあえず、私の場合はこの後で始祖から何か反応があるかも知れませんが……あの子はただの「お腹をすかせた迷子」です。その認識と扱いは変えません。色々不審点はありますが、あの子はただの迷子です」

「そうね。迷子を保護して、お腹をすかせていたからご飯をあげるのは何もおかしくないわ。ただの迷子なんだもの。それも小さい子供なんだから、普通は親が見つかるまでお世話するわよね」


 ソフィーナさんの同意を貰ったところで、隠蔽した空間の端っこで撮影を続けていた観測班の人の方を振り返る。しっかり頷きが返って来たので、認識の共有は大丈夫だな。とりあえずここにいる全員に限れば。

 ……問題は、他の人(神含む)にバレたり、あの迷子が他の人の所に現れたりした時なんだよなぁ。明らかに啓示で出現したんじゃなく、出現して放置されていたのを啓示で教えてもらったってパターンだし。

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