第790話 23枚目:イベント状況

 クランハウスである島の留守番にはとりあえず「第四候補」が残ると言う事で、ポリアフ様の山にある神殿へと神域ポータルから移動する。「第一候補」はこれの準備もあったからな。その上で指示だししてくれたんだからありがたい事だ。

 とりあえずここにも司令部というか、元『本の虫』ネットワークの窓口になれるパストダウンさんがいるので、液体火薬の解析結果を渡しておく。パストダウンさんは受け取ってすぐにメニューを操作し始めたので、即行で掲示板による共有がなされているのだろう。

 で、と、その間に「第一候補」へ、現在の戦況を聞いてみると。


『うむ。特級戦力はなにも、竜族ばかりでは無かった……といったところであるな』

「と、言いますと?」

『「第三候補」のところにいるであろう。筋力に特化した例外中の例外が』

「…………なるほど」


 どうやら、あの巨大な流氷。大陸南側に迫っていた1つは、ルウがぶっ壊したようだ。まぁ確かに、ルウの攻撃方法はもっぱら物理打撃属性だけどね? 【環境耐性】を覚えて貰ったから、暑さ寒さならよほどでなければ問題なくなってるし。

 とは言え流石にいつもの鉄球ではなく、あちこちと協力して作った巨大な氷の柱みたいなものを、振り下ろす形で叩きつけた、というのが正しいらしい。『アナンシの壺』に動画があると言う事で見に行ったが……見えない巨人でも居るんだろうか、という感じだった。

 実際は根元でルウが振っているんだろうが、実際の大きさを別にすれば、実に分かりやすく滅多打ちだったよ。これは酷い(誉め言葉)。


「そして1つどうにかなるなら、2つまでならエルルとサーニャで何とかなる、という事ですね」

『そういう事であるな。とりあえず今のところは、であるが。あとは、流石にここまで連戦が続いてくれば、慣れの1つ2つは出るといったところか』

「まぁそりゃここに来るまで、ほぼ全部同じパターンの敵ばかりが来てますからね。雪像型と氷像型以外には確認されていないんでしょう?」

『うむ。ついでに言えば、空を飛ぶ相手も確認されておらぬ』


 まぁひたすら数を相手にしていて、その種類が決まっているなら慣れもするだろう。その慣れが通用しない相手が来た時は問題になりそうだが、今の所そういう気配はないらしい。

 雑魚にはダメージ床が通用するし、そもそも通路を埋め尽くすほどいるなら狙いをつけなくてもどれかには当たる。飽和火力を叩き込むのが正解なのだから、少なくとも魔法系スキルの経験値は大変美味しいだろう。

 そしてここまで不憫な扱いが多かった近接職だが、主に大陸北側においては無双ゲーのような感じで大活躍らしい。実に楽しそうに雑魚を薙ぎ払っているという事で、防衛状況としては比較的良好、と言えるだろう。


『……で、あるから、警戒する余力は十分にあったのであるが……』

「まさか最初の大陸で仕掛けてくるとは思っていませんでしたね。こちらに来ている内、例の神々の加護を受けている召喚者プレイヤーは大丈夫でしたか?」

『今のところは問題無いようだ。問題があれば、どこかの守りに支障が出ているであろうからな。そも、加護とまで呼べる力に影響が及ぶには、相当な長期戦を覚悟せねばならぬ』

「……ただし、通常であれば。ですけど」

『そうであるな……』


 と言う事で問題になるのは、まんまとしてやられた形になる最初の大陸での自爆テロだ。クランメンバー専用掲示板を見てみると、どうやら“権威の神々”だけではなく、他の場所でも自爆テロが起こっていたらしい。

 しかも人間種族至上主義の神々だけではなく、小人族や森人族も含めて文字通り可能な限り、あるいは手当たり次第といった感じで被害が出ているらしい。お陰で最初の大陸は今、かつてない程の混乱に見舞われているようだ。


『本当に、被害を最大化する為の、最高のタイミングとやり方で仕掛けてくるであるな……』

「混乱が広がれば不安が湧きます。そして、不安が湧けば付け込む隙になる。全く、本当に嫌になる程効率がいい方法ですよ」


 もちろん、最初の大陸に残っている召喚者プレイヤーも存在する。その理由は行商人プレイをしているからとか、新人の面倒を見ているからとかで様々だが、それでも対処してないって事は無いらしい。

 それでも、出来る事は限られている。同時多発自爆テロ、という、間違いなく歴史に残る大惨事のせいで、最初の大陸にある国同士で、疑心暗鬼を発端とした緊張が高まっているようだ。

 ……もちろん、世界全体で見ればそんな事をしている場合ではない。が、最初の大陸は、とりあえず一旦とつくものの、目に見える危機が去っている。平和になっている、のだ。


「余裕が出来たのは良い事です。が、その余裕を、的確に余計な思考に持って行くのは最悪です。……その手腕は、手腕だけは、本当に見事と言わざるを得ないんですけど」

『全くであるな。まっとうに使えば、大商人にも、英雄にも、それこそ救世主にすらなれるであろうに』


 その理由が、趣味嗜好の違いって言うんだから、本当にどうしようもないんだよな。

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