第伍捨肆話



 挟撃に成功し、そのまま沈没艦隊を再び海の藻屑と化した日英艦隊。意外にあっさりと始末することができたのは幸運というべきか。亜米利加アメリカの艦隊は不幸にも嵐にまきこまれとるらしいし、下手したらそのまま各個撃破されてた可能性もある。俺も海の底だ。海の底に都なんてないから。


 それはそれでよかったのだが、なんでか俺たちの方に英吉利イギリス艦隊が合流することになった。その中でもなんか変な戦艦がこっちにやってくる。前に砲台がずらりと並んでいて、申し訳ないがそんなにかっこいいとは思えない。そのうえ、その艦から英吉利人たちが鳳翔の方にやってくることになったらしい、なんでか。士官たちが話をしている。


「フィッシャー卿の置き土産?」

「どうした?」

「いえ、英吉利の艦の開発者として有名なフィッシャー卿という方がおられてですね。その方が、来るべき時に備えて用意をしていたようなのです」


 そんな会話が聞こえてきた。来るべき時って、まさかと思うが邪神との対決か?ちょっと聞いてみるか。


「そのふぃっしゃーって人は何しようとしてたんだ?」

「ああ、師範」


 いつの間にやら俺は師範と呼ばれている。無理もない。みんなをしごきすぎたか、強いと尊敬されるもんなんだな。


「やろうとしてたのは海軍と同じですが、ただ範囲は限られているみたいですね」

「限られている?」

「遺物化するのは砲弾と爆弾だけでいいだろうと。やられる前に殲滅すればどうということはない、だそうです」


 おい。そりゃまた剛毅ごうきなことだが……一面の真理ではあるか。


「火力と速度があればあとはなにもいらない、でしたっけ」

「さすがに本人はそこまで言ってないと思うが……速度は防御だとかは言ってたな……」


 前に砲台が集中してるあの戦艦ネルソンもそれを狙ってるんだろうな。見つけ次第蛸殴り。本当の意味で蛸殴り。見敵必殺ってやつか。魔剣が思わずぼやく。


示現流じげんりゅうの薩摩武士かなんかかフィッシャーって奴は』

「確かに薩摩人みたいな発想だな」

「薩摩?そういや以前英吉利と薩摩は戦争したんだったっけ」


 魔剣に対する俺の返答に水兵が答える。薩摩と英吉利で戦争?なんだか聞くだけで恐ろしい単語の組み合わせだがそれ。


「結局鹿児島の街は燃えたけど、英吉利も船三隻沈められて痛み分けで仲良くなったんだよな?」


 なんでそんな河原で殴り合ったあと、友情が芽生えるみたいな展開になってんだよ?


「それはさておき、フィッシャー卿が秘密兵器を用意していたらしい。生前に、『自分で成果を見れないのが残念だ』といっていたらしいが」

「聞けば聞くほどとんでもない男だなフィッシャーって……」

「そりゃドレッドノート級建造し世界の海戦を前提から覆して、自国の艦もぜんぶ旧式にした男だからな」

『自国のを旧式にしてどうするんだ』


 俺も魔剣もあきれるしかなかった。邪神の方もいい迷惑だろう。味方にしても迷惑だが、敵に回すと鬱陶しいことこの上ない種類の人間だ。


「んで、なんだよその秘密兵器って」

「水上をだな、すごい勢いで突っ込む爆弾」

「なんだそれ」

「魚雷の更に馬鹿でかい奴みたいなもんだな。高速で大口径主砲を撃ちまくる上詰める限りの爆薬を積んでるという代物。50ノット(約90km)出す艦だと。上陸作戦用モニター艦をさらに原型とどめないくらいに改造してるってさ」


 そんなもんどこで使うんだ?避けられたらどうするんだよ。


「今回、日米英合同艦隊でのル=ルイエー攻略作戦、どうもまず、周辺がえらいことになっているからな」

「どういうことだ」

「島が巨大化してる。おそらく埋め立てとかしているようだな。連中が拠点にしてるからか」

「えぇー」

「だからフィッシャー卿の置き土産をぶっこむってわけだ」


 置き土産ねぇ……どのくらいぶっ壊せるものだろうかってのは気になる。士官の1人が叫ぶ。


「この艦16インチ砲積んでるのか!?」

「16インチって凄いのか?」

「長門と同じだぞ」


 長門と同じって……長門の半分もない大きなのこの艦にそんなものを積んでどうするんだって感じだが。遺物化した艦を砲撃した上突入させるのはいいけど、砲、いいのかよ。思わず聞いてしまった。


「突入前に全員退避すんだよな?」

「それはもちろん」


 つまるところ我々は、合流した米軍とともにこの変な艦を守りながらル=ルイエーへ殴り込みをかけることにしないといかんわけだ。なんともはや。


 などと言っていると亜米利加の艦隊も合流できた。風雨でお疲れのところ悪いが、いよいよ突入することになるな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る