17話 反抗勢力
王宮にはメイドが寝泊まりするためや来賓に貸し出すための部屋があるのだが、その一室にガーベラは眠っているのだった。ガーベラは不眠不休で学院に来ていたらしく、騎士に連れてこさせたときには既に寝入ってしまっていた。
ガーベラの寝るベットの横でマリーとマーガレットが話をしていた。
「反抗勢力?」
「ええ、想いの力を悪用して世界転覆を目論む輩がいるのですが、彼女はそれに巻き込まれたのかと」
「想いの力を悪用するって……」
マリーは怒りと動揺で言葉を失ってしまう。
マーガレットは紅茶を入れ、マリーに差し出した。
「……ありがとう」
学院が設立された頃であっただろうか。本来、神のみに許された《想いの力》を人々に教え使えるようにしたのはあの喋るカエル-ハルヴェイユであった。彼いわく、
「想いの力を人間が使えるようになれば、アマリリス様の目指した完全な世界の糸口が掴めるやもしれません」
という事情であった。しかし、この行為は浅はかであったのだ。その力を使い悪事を企む連中がいたのである。学院の外部のものが学院の生徒を誘拐して《想いの力》の情報を手に入れようとしたのだ。ガーベラはそれに巻き込まれた訳であった。
「これも、私のせいなのかな……」
私はこの世界のお姫様なのだから、この世界の治安が悪いのも私のせい……。何でもかんでも自分が悪いと思うのはアマリリス譲りかしら。
「何を言っているのですか!悪いのは悪事を企む輩です!マリー様が責任を感じる必要はありません!」
だからといって、喋るカエル-ハルヴェイユを責める訳にもいかない。彼が学院を築かなかったらマリーとマーガレットは出会わなかった可能性があったからだ。
大声をあげたせいで眠っていたガーベラが起きてしまった。
「……ここは?」
「起こしてしまってごめんない。ここは王宮よ」
「王女………!」
ガーベラはマリーを見ると懐をまさぐる。
しかし、あったであろうそのダガーナイフはすでに取り上げられている。すると、ガーベラは爪をたててマリーに飛びつこうとしたのだ。
それをマーガレットが抑えた。
「何故、襲ってくるの?」
「恐らく洗脳されているのでしょう。想いの力が我がものになれば、その
ボキッという音が聞こえた。マーガレットはガーベラの腕を折ったのだ。
「ちょっと、やりすぎじゃないかしら?」
「マリー様、何故避けなかったのですか?」
マーガレットが言う。
「ガーベラが襲いかかってきたとき、教室でもマリー様は避ける気配がなかった。それは
――そう、気づいていたのね。
確かに私は教室でガーベラにダガーを向けられたときも、ベッドから飛びつかれようとしたときも避ける素振りをしなかった。私の身体能力があれば簡単に避けられたでしょうね。
それは私が不死だから?傷ついても再生すると見込んで避けなかったとでも言うの?ちがう、私はガーベラの想い、憎悪をも受け止めようとしたのよ。だから、避けなかった。
「マリー様が避けないのであれば、私は最前を尽くしてマリー様をお守りします。彼女もまたマリー様に忠誠を誓った同士、君主に刃を向けた代償としては軽いですが、正気に戻れば許してくれるでしょう」
「洗脳は解けるものなの?」
「王宮の術者たちに聞いてみましょう」
王宮術者、学院の教授-ハルヴェイユも含めた想いの力を研究するものたちである。
マリーはガーベラを王宮に仕えるメイドたちに預けると王宮術者のもとへ向かった。
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