第33話 なにその闇ルール
プロジェクトも一緒の部署の女の先輩三人に捕獲されて、居酒屋の個室で綾香さんと僕は取り調べされることになった。
上司である綾香さん、先輩三人に、僕……天辺と下辺のカップリングという珍妙な面談だ。
「まぁ、好きなの頼んで。今日は迷惑をかけたから奢りよ」
「「「やったぁ〜〜!!!」」」
肝の据わった風を装い、綾香さんが上司の顔をする。先輩たち、綾香さんの心配してたんじゃないの?
「やっぱり怪しいと思ってたんですよねぇ〜」
「割と早く判明したね」
「要くんも、なかなか嘘つきだね。バレるけど」
メニューを開きながら、先輩たちが超盛り上がってる。
「すみません……」って、僕は謝る。プライベートな事なのに、なぜ謝らなきゃならないんだと思いつつ。
「まぁ、予定調和でしょ! 」って言われる。う、うん。入社するなり、綾香さん推しで邁進していたと思うから……達成しました! と言っても過言ではないよ。綾香さんが公認カップル嫌がるから内緒にしてただけだし。
「お二人のことほかに知ってる人いますか? 」
「……井達さんかな」
「井達さんかぁ〜! じゃ、結構バレてる? 」
「いや、そんな事ないよ。井達さん、綾香さんと同期だし仲良いでしょ? 独自ルートなんじゃない? 」
独自ルート!? 言い方!!!
「確かに、井達さんには早々にバレてました」
「なるほどね」と、先輩たち。急に手帳やメモ帳を出し始めてメモを取り始めた。
「いつから付き合ってるんですか? 綾香さん」
「えっと……」綾香さんまで手帳を出し始めて、日付を言い出す。
なんなの、これ。
「ほら、当たった! 」なんて言うから理由を聞いたら、綾香さんがLIN□を社員とつなげ始めたからだって。綾香さんも「ダメだったか……」と応えてる。
ここで、相手は井達さんじゃないってリストから外れたんだって。リスト……
先輩がオーダーボタンを押して店員さんを呼ぶと、注文を次々と言い始めた。
「ビール四つと、要くんはウーロン茶で良いよね」
ビールって、アルコールだよね。妊婦さん飲んでいいのかな? 多少は良いみたいだし初期だから平気かな? チラッと綾香さんの顔色を見るけど、綾香さんは硬い顔をしている。
綾香さんが食べたかったお寿司のセットをお願いして、先輩たちに「出た! わんこ彼氏! 」とツッコミを入れられる。
「で、今日はどうして会社サボったんですか? 」
「そこは、ちょっと言わないわよ」
「でも、要くんは何処にいたのか分かって一緒に帰ってきたんですよね? 」「要くん、井達さんと帰ったのにねぇ〜」
尋問が佳境に入り、綾香さんも追い詰められてきている。
「さっき、アルコールのオーダーの時、要くんのリアクションおかしくなかったですか? 」
「…………うっ! 」
綾香さんが目蓋を閉じて、長考に入るかの様に見せて直ぐに投了した。
「で、ご結婚のご予定は〜? 」
「あ、ある……」
綾香さん、なんてチョロインなんだろう……あ、僕のせいか。
そう聞くなり、先輩たちがメモしていたところを綾香さんと僕に突きつけて「ご署名お願いしまーす」って、だから、なんなのこれ。
僕がおずおずと言われるままサインをしていると、綾香さんが説明してくれた。
「うちの会社、社内恋愛で結婚するカップルから署名をもらった三名までは金一封なのよ」
ちなみに、新入社員には教えていない闇ルールらしい。人事からの社員の結婚報告があった時に署名を社長まで持って行くんだって。
何処で誰が付き合いだすか、みんな独自の観察力を研ぎ澄ませているらしい。それ故に簡単に噂を流さないなんて事もあり、スピンもあり。闇ルールを知らない若い子たちが情報源になるという。社長、酷い。
うわさ話をガンガン集めてくる藤田がまだかわいいレベルなんだと思った。
「だから怖いんだって……うちの会社」
「井達さん、署名貰わなかったなんて流石〜! 男前〜! 」
また余計な株を上げる井達さん。
なんで僕にそれを話さないかったの? って聞いたら、結婚成立しなかった場合の事を心配してたからだって。長く会社にいると、色んなケースを見たらしい。
あと、まだ闇ルールがあるって……
会社もジェシカさんを雇ってただけあって、ぶっ飛んでた。
でも、先輩たちのお陰で外堀を埋められた綾香さんだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます