第三十一話「検査準備」

 機械的荷物検査。

 身体検査。


 その他諸々の検査を、異常な迄の高精度で行ってくる。

 以前の検問のモノとは一線を画す。


 その精度は徹底的かつ冷淡的。

 異常な迄の徹底主義。


 故に生徒達の中に、レジスタンスの精神を持つ者が混じる事はない。

 学校の警備も徹底している。


 他人が入り込む余地はないだろう、が。

 一度入り込んでしまえば、後は下り坂。


 エルシーの采配が刺されば良いのだが───。



 ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢



「警備隊長様」

「……何でしょうか」


 エルシーが、男の警備隊長に声をかける。

 隊長の言葉遣いからして、エルシーは相当の信頼を寄せられているらしい。


「私もそろそろ退職。最後に花を持たせてはくれないでしょうか」

「ううむ……だが───」


 隊長が辺りを見渡し、身体検査の準備の様子を一瞥する。

 数秒悩み、そして最後には頷いた。


「───良いでしょう。ですが手抜きは許されませんよ」

「ありがとう御座います。警備隊長殿」

「うむ。では行くと良い」


 その言葉にエルシーは会釈し、身体検査に向かっていった。

 その口角は、小さく上げられていた。

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