第5話「かわり」

 駆けつけた三人の帝国兵。

 一秒後には正確に脳天を撃たれて、倒れているが。


 まだ、駆けつけてくる帝国兵の足音がする。

 私は死体の束からナイフを奪い、その場を遁走した。


 とは言っても、戦略的撤退を施しただけ。

 私には、行くべきところがある。


 帝国軍兵駐屯地。

 そこに向かいながら私は、必要な食料などを、街を走り去りながら購入していく。


 そして着く。駐屯地に。

 そこで私は、建物裏から話を盗み聞きしていた。


「──────兵が、数人か撃ち殺されてるみたいだな」

「みたいだな。市民の謀反か何かだと思ったが……」

「が?なんかあんのか?」

「ああ。上からの報告で───犯人は、エクセルかも知れないって」

「ほーう。それは───面白そうだな」


 そこまで情報が回っているとは。

 見られないようにしたつもりなのだが。


 溜息を吐いた私は、近くを見回して馬車を発見した。

 荷馬車の様だ、事実好都合でもある。


 だが先程の帝国兵が邪魔である。

 ならば。


「……うおっ!?敵へ───」


 話し合っていた二人の喉を掻っ切り、馬車に向かって走り抜ける。

 近くに敵兵は居ない。


 この駐屯地も、かなり規模が小さいモノだ。

 帝国兵も、私の捜索の為に出払っていた。


 しかし巡回兵はいる。

 仕方ないので、私はプライドを捨てることにした。


 先程殺した帝国兵から軍服を盗み、着込む。

 フードを深く着込み。声音を変えて馬車を走らせる。


「どこへ行く?」

「───上からの伝令でな。物質補給をしに行くんだ」

「ほう」


 帝国兵が馬車の周りを見回す。

 そして頷いた。


「……確かに物質を運べと言われていたな。行っていいぞ」

「感謝する」


 道を開けた帝国兵に上っ面の感謝を述べつつ、私は駐屯地を抜ける。

 追手はない。


 購入した物質と積まれた物質もあり、関所などの危険を度外視すれば生活は安泰に。

 しかし……。


 街を抜け、木で囲まれた道の中で、私は馬車を止めた。

 少し、気がかりなことがあったからだ。


「地方の比較的小さい駐屯地から、これ程までの武器が運ばれるとは……」


 積荷だ。

 そこには、数十艇にも登る銃器の数々が、乗せられていた。


 何故ここまでの銃を必要とするのか。

 確かにここには銃器生産工場もあったと見受けるが……。


 一度に要求する量を大幅に度外視している。

 本土は、何故そこまでの銃器を必要とするのか。


 ……とにかく、この銃器を望み通り与えるわけには行かない。

 少しそこから銃器と新品の帝国軍軍服を拝借して、森の中に埋まって貰うとしよう。


 壊す必要はない。

 ここに帝国軍兵は来ない。


 いるかもしれないレジスタンスなどが拾ってくれたら万々歳だと。

 私は馬車から馬を取り外し、騎乗して帝国本土に向かうことにした。


 そして見える関所。

 溜息を吐いてしまうが……強行突破で、行こう。


 回避する術はない。

 帝国領地は隅々まで壁に囲まれているから。


「えいやッ!!」


 掛け声を上げ、馬に鞭を打つ。

 腰を上げて銃を構え、そして撃つ。


 命中。

 撃つ。

 命中。

 撃つ。

 命中。


 兵が狙撃に困惑する様子が見える。

 そうか、君たちはまだ経験していないのだな。


 甘い。

 そんな防衛だと、すぐに敵の突破を許してしまうぞ。


「敵兵ッ───!!!」

「だが軍服を着ているぞ!!」

「撃って来てるのが見えんのか!?アレは敵だ!!」

「分かりまし───」


 戦場で躊躇する者はすぐに死んでいく。

 七人目だ。これなら問題なく突破出来る。


「ジルド!!……ッ殺す!!!!」


 将校と見られる男が銃を向ける。

 しかし遅すぎる。

 私は横を過ぎ去ると同時に、男の首を掻っ切った。


「が───」


 跳ね飛ぶ敵兵の首。

 関所は陥落した。全ての駐屯兵は死体となったのだ。


 それを背に、私は淡々と走り去っていった。

 帝国への復讐が、実り始めていくのを感じる。


 気づけば私は、それに口角を上げていた。

 不気味だと笑うか?───いや、最初からこうだったわけではない。


 全ては。



 ──────帝国が、私をここまで変えたのだ!!





明日三本投稿します!

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