凄まじい文章量で描かれているが、その中心にあるものは意外なほど一貫している。
それは、徹底した自己肯定の物語だと推測する。
主人公・日向は、他人との距離感が近い。感情も正義感も強く、相手の心の傷へまっすぐ踏み込んでいく。その近さを拒む者は敵として配置され、受け入れる者は味方になる。
パートナーである悠護は、大人に本当の自分を見てもらえなかった傷を抱えた少年であり、日向の半身のような存在だ。日向は彼を見つけ、悠護は日向を受け入れる。だから二人が強く結びつくのは、恋愛の積み重ねというより、もともと分かれていたものが一つに戻るような必然として描かれている。
印象的なのは、キャラクターが怒りを爆発させる場面の迫力だ。そこには、届かなかった、伝わらなかった、見てもらえなかった心の傷がそのまま噴き出している。
そう考えると、無魔法とは単に魔法を無効化する能力ではない。
人間関係の壁を破壊し、自分を受け入れてくれる人を探すための掘削機である。
この作品は、その力によって世界とぶつかりながら、それでも自分を肯定してくれる場所を求め続ける物語なのだと思う。
しっかり練られた世界観でも、難しすぎず入りやすい。そのうえで世界観の描写に不自然さをほとんど感じないのがGOOD。そのおかげで1話ごとが濃くても、スムーズに読み進めることができる読者にも優しい作品になっている。
物語は学園ものらしい楽しい一面がある一方で、少年少女の身の上に合った思いや葛藤、世界観が生み出す悪意の数々も余すことなく書かれていて、作中のシリアス部分へとのバランス上手くとれている。
……ここまではレビューを残す誰かが語っていることだろう。私がさらに推したいのはもっと細かいところだ。
作品より抜粋
『談話室の壁はすべてガラス張りになっている。(中略)
床には毛足の長い赤いカーペットが部屋の端まで敷き詰められていて、座り心地のいい革飾りのソファーがローテーブルを挟むように、いくつも置いてある。
フロアにはちらほらと人がおり、カードゲームに興じたり、他愛の無い話で花を咲かせたりとーー』
本筋とはあまり関係の無さそうなただの学園(作品の舞台)の一幕だが、そこで、描写を省くのではなく、主人公の目に映るものをしっかり描写することで、読み手側が受ける印象が彩られるのだ。そのような場所が上の例だけでなく、さまざまな場所で見ることができるため、見ていておもしろい。
章の構成も工夫されていた。1章ずつまとめ読みするのに、長すぎず短すぎずという感じだ。毎週1章ずつ読んでいこうと思えるくらいで、綺麗にまとめられていた。
そんな細やかな作者の作品に対する工夫も楽しみの1つとして見てみて欲しい。
日向の道がどこへと続くのか、ぜひ追っていきたいと思える作品だった。
私は、この話を読んで見て、私達が住んでいるこの世界に、魔法があったなら、この物語のようになっているのではないかと思いました。
なぜなら、この物語は、人の感情、現実の理不尽さをとてもうまく書いているからです。
魔法が強大すぎるがために、魔法を使った犯罪者には、救いがほぼ無いことや、負の感情を溜め込みすぎた人間の行き着く先などを恐ろしくリアルに描いていたりなど.......
もちろん、主人公と仲間たちとの、やり取りは、見ていて楽しいし、恋愛シーンは思わず、 叫びそうになりそうなぐらいに甘酸っぱかったです。
とりあえず、読んで見ればわかります。最高です。