第17話 一緒に作ろう【4】
「そう? まだインフルエンザとか流行ってるから、具合が悪かったらすぐに病院に行くんだよ? 俺、車も車の免許も持ってないから病院行く時タクシー呼ぶ事くらいしか出来ないし……」
「だ、大丈夫ですよ!」
「ならいいけど、念のため風邪薬は買っておきなね?」
「は……はぁ……」
……心配しすぎでは。
というか目が潤んでるとか顔が疲れてると、そんなんで体調が分かるのか? この人。
確かにちょっと寒気はするけど……外だから仕方ない。
「コウくん、具合悪いの? 大丈夫?」
「え? だ、大丈夫だよ」
「今日はあったかくして寝るんだよ? 俺、これからまた出かけて帰りは夜になるけど……それでもよければ薬買ってこようか?」
「ほ、本当に大丈夫ですから!」
ぐっ、ダメだ……またモヤモヤしてくる。
長谷部さんを前にすると……。
「…………」
「……、……入学までまだ時間もあるし、新しい生活に不慣れなせいで体調を崩す子も多いから……あまり無理しないようにね」
「あ、は、はい」
ほんの少し困った笑顔だった。
ここまで気を使われると、姉の好きな人をますます苦手になりそうだ。
それだけ言って、長谷部さんはアパートの階段を登って行った。
また出かけて夜戻るって事は……別な仕事かな?
『先生』って職業の人は私生活が分からないけど、長谷部さんの場合すぐ近くがその『生活スペース』だからとてつもなく変な感じ。
これ、学校で会ったらめちゃくちゃ変な気持ちになるんだろうなぁ。
でも、嫌な態度取ってしまったところはだんだん気落ちしてくる。
姉の好きな人なのに。
俺のせいで姉さんの恋が上手くいかなくなったらどうしよう?
しゅん、としているとせりなちゃんが肘に触れて──え?
「コウくん、本当に大丈夫? 具合悪くない?」
「っ!? う、うん! 本当に、大丈夫だよ……!」
あぎゃー!
せりなちゃんの指が、肘にぃ!
「そ、それより、寒いから部屋に帰ろうよ」
「う、うん。じゃあね、ボス」
「ぬぁーご」
別れの挨拶も完璧にこなすのか、ボス。やるな。
「あ?」
階段を登って自分の部屋に入ろうとした時、姉が部屋から出てきた。
ものすごい顔で左右を確認している。どうしたどうした?
「あ、幸介! 今長谷部さんの気配……じゃなくて長谷部さん帰って来なかった?」
気配? 気配って言った?
は? うちの姉は何者?
「帰ってきてたみたいだけど……」
「ぐあってぃむ! あと数秒早く気づいていれば!」
「まだバレンタイン前だろ?」
「バレンタインの予定を確認したかったの!」
普通に部屋に突撃すればいいのでは?
同じアパートに住んでるんだし?
「あれ? コウくんのお姉さん、今日はお休みなんですか?」
「ううん、今日は使命のお客さんの予約だけで暇なの。……私はまだ誰からも指名されないのよ……」
「え、あ、す、すみません!?」
「気にしないで。これが現実だし、今の私の実力なのよ……ふふ」
そ、そうだったのか。
「! ……ねえねえ、そういえばせりなちゃん、バレンタインはどうするの?」
「え?」
「へ!?」
ねねねねねねねね姉さん!? なななななに、なに、な、なっ、なに、なにを、ぉ、おおぉ、き、きききき聞いて!?
「え、えー、と……」
な、な、なっなななななんで俺の方をちらちら見上げるの!?
まさか、せりなちゃん……よ、予定が!?
俺にチョコをくれる予定があるんですか!?
そんなバカな!
でも、義理でももらえたらめちゃくちゃ嬉しい!
義理でも! 友チョコ的なものでも! なんなら余ったやつだけでも!
「え、えええとおおお……!」
口籠って顔を真っ赤にしてしまうせりなちゃん。
答えは未だ出ず。
俺からも目を逸らされてしまった。
あ、これは、絶望感な感じですか?
「ふむふむ……。そういう事ならせりなちゃんの部屋で一緒にチョコ作らせてもらおうかな〜」
「え?」
「え!?」
「弟の部屋は調理器具が鍋とか電子レンジしかないのよー。お願ーい」
「うっ」
だ、だって、ケトルや炊飯器を優先してしまって、まだその辺まで揃えられてないんだよ!
コンビニ飯や冷凍食品、せりなちゃんが持ってきてくれるおかずで、食生活はわりと潤ってるし!
迂闊に揃えても使いこなせる自信がないし!
っていうか、あの散らかしっぱなし魔人がせりなちゃんの部屋へ足を踏み入れる!?
待て待て待て、そりゃいくら俺でも「汚部屋の発生源」をせりなちゃんの部屋に入れるのは凄まじい抵抗が……!
さすがに人様の部屋で荒らす事はないだろうけど、アレを見たあとではなんかこ、なんか……なんか!
「……」
「せりなちゃん?」
「コウくんのお姉さんも、チョコ手作りですか?」
「ギックゥ!」
今恐ろしいほど分かりやすく顔を赤くして汗ダバーってなったな。
「お、お姉さんも、好きな人が?」
「あ、いやあ、あのそのぉ〜!」
「姉さんは長谷部さんが好きなんだって」
「こ、幸介ぇ!」
「きゃー! そうだったんですね! 分かりました! お手伝いします! ものすごい感じのをを作って告白を成功させましょう〜!」
「せ、せりなちゃん?」
「せ、せりなちゃん!?」
あれ? なんか大変な事になってない? 姉。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます