第3話 虚ろなる軍勢
宿泊所を飛び出した直後から、右腕から軍勢剣スクアドラを生やした村人が次々とダミアンへと襲い掛かって来た。月明かりに照らされた生気のない表情の一団は、見ようによっては訓練された暗殺集団のようにも映る。
「
セルバ村近くの川を漁場とする漁師とその妻が、二人同時にダミアンへ斬りかかってきた。ダミアンは円を描くようにして周囲を切りつける「円刃」で応戦。強烈な一撃は二人分のスクアドラの刀身を破壊し、勢いそのままに首を二つ斬り飛ばした。
「
物凄い速力で距離を詰め、斬りかかってきた老齢の男性目掛けて、ダミアンは近づく間を与えずに斬撃を飛ばす。正確無比な一撃は老齢の男性の首を落とした。ダミアンの前では大した意味を成さないが、肉体年齢を問わず、スクアドラは宿主に驚異的な身体能力をもたらす。それはすでに肉体に意思がなく、骨や筋肉が耐え切れないような無茶な動きを強制しているからに他ならない。
その後もダミアンはスクアドラに寄生されたセルバ村の住民を切り倒しながら、村の中心である広場へと歩みを進めていく。
三十名ほど斬り、襲ってくる村人も随分と少なくなった。宴の様子を見るにセルバ村の住民は四十名弱といったところ。残された村人の数は多くはないはずだ。
茂みに潜む影が背後からダミアンへと斬りかかった。ダミアンは冷静に振り向きざまに首を刎ねようとしたが。
「……ちっ」
一瞬の思考が刀を振る速度を鈍らせ、相手の刃の方が先にダミアンを捉えた。咄嗟に後方に飛んだが、胸を浅く袈裟切りにされ、裂けたシャツから血が滴り落ちた。
ダミアンへ斬りかかって来たのは、十歳前後と思われる少年だった。宴の席では姿が見えなかったが、家の中にでも待機していたのだろう。
村の大人同様に右腕からは軍勢剣スクアドラが生え、小柄故に刀身が地面へ触れ、重さで右肩が落ちている。子供の体で無理に重い刀身を振るったため、どうやら肩が外れているらしい。痛みに際しても声一つ上げず、その顔には生気がない。脳幹へ届く管の太さが大人と同じため、小柄な少年の姿はより痛々しく見える。
スクアドラに寄生された者は人間としてすでに死んでいる。そんなことは分かっている。これまで何人も村人を斬ったというのに、相手が子供だと知り咄嗟に刃を逸らしてしまった。ほんの一瞬の気の迷いだ。
「こんな幼子にもか」
無感情にそう言うと、ダミアンは刺突の構えを取って刀を引いた。
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ダミアンは強烈な刺突で少年へと迫り、右腕から生えるスクアドラを一撃。粉々に破壊した。破壊された瞬間、脳幹や体中に張り巡らされていたスクアドラの管が炸裂。少年の悲鳴一つ上げず、全身から出血してその場に崩れ落ちた。
「……すまない」
またしても気の迷いだった。寄生された時点ですでに宿主に生はないと分かっていたが、首を刎ねるのではなく、スクアドラを破壊することで、何か違った結末が訪れるではと淡い期待を抱いたが、やはり結末は変わらない。首を刎ねようがスクアドラを破壊しようが、寄生されてしまった時点で全てが手遅れなのだ。
魔剣士狩りに執心を燃やすダミアンであっても、スクアドラに寄生された者たちには哀れみを禁じ得ない。彼らは魔剣士ではなく、一方的な被害者なのだから。
「安心しろ。狂気は今夜、私の手で終わらせてやる」
少年の亡骸にそう告げると同時にダミアンは刀を振り抜き。背後から切りかかって来た少女と母親を一撃で切り伏せた。
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