第11話 狩人
「
「いいぜ、存分に抵抗しな。その方が虐め甲斐がある」
ベニオが渾身の膝蹴りを腹部へ見舞うも、強靭な肉体を持つスカラはビクともしない。
「顔だけじゃない。体まで最高じゃねえか」
「止めろ……」
ベニオの尻に回されたスカラの手に力が入り、ベニオは悪寒に身震いする。これまで
「ああ、駄目だ駄目だ駄目だ。もう我慢ならん!」
「うあっ!」
欲情に支配されたスカラは柱に背を付けたベニオを引き寄せ、そのまま強引に床面へと押し倒す。ベニオに
「たっぷりと可愛がってやるからな!」
「嫌っ!」
ベニオの胸を守るサラシに魔手が伸びるが、
「
「むっ?」
突然、背後から轟音が鳴り響く。施錠された重い両開き扉に風穴が空き、洋装の
「魔剣士スカラの屋敷はこちらで合っているか?」
「ダミアン様!」
泣き出しそうになっていたベニオの瞳に希望の光が灯る。
その様子にスカラは不快そうに眉を
「……空気の読めない野郎だな。見ての通り俺はお楽しみ中だ。大人しく来た道を引き返せば、殺すのは後回しにしてやる」
「それは私の連れだ。勝手を言ってもらっては困る。
「優男風情が、死んで後悔するなよ」
「死んで後悔するのはあなたの方よ」
拘束から解放されたベニオが眼光鋭くスカラを睨み付けるが、その態度もまたスカラの
「お前、あの男に
「……だったらなんだというの?」
「いいね、恥じらいながらも否定しないいじらしさ。愛する男を
身を
「前言撤回だ。お前はこの場で殺す。その方があの娘、俺好みの表情をしてくれそうなのでな」
恋慕の相手という精神的支柱を失った際のベニオの絶望感は相当なものだろう。その瞬間を想像するだけで、スカラは最高に興奮していた。想像を現実にするため、是が非でも目の前の剣士を殺さねばならない。
「変態め。まあいい、私と殺し合ってくれるというのなら好都合だ」
ダミアンが強烈に
「屋敷が襲撃を受けているというのに部下共は誰も姿を現さない。全員殺したのか?」
「道すがらな。特にあの魔剣士、まるで話にならかったぞ」
「あの
スカラは部下の死を悼むことはせず、女遊びに興じる間の時間稼ぎにもならぬ部下の
「お前も魔剣士だな。あの娘に
「私は私の目的のために行動しているだけだ。お前が魔剣士であるなら、殺す理由はそれで十分だ」
「なるほど、お前がかの悪名高い魔剣士狩りというわけか。こいつは面白くなってきた。性欲意外で
ダミアンを魔剣士狩りと認識した瞬間、スカラの狂気の方向性が色情狂いから戦士としての闘争本能に寄った。全てをぶつけるに値する強敵との遭遇は貴重だ。
本気を出したスカラは、拮抗していた刃を
「耐えたか。魔剣士狩りなんて
「……
「流石は狩人。知識も豊富ってか」
獣爪剣ノーガチ。刀身と平行した同等の圧力を持つ斬撃を発生させ、一太刀で三撃を叩き込む非常に攻撃的な魔剣だ。傷跡が大型獣の爪で抉られたように見えることから獣爪剣の名で呼ばれている。また、使用者の闘争本能を高める働きも持ち、かつての大戦時には戦場を縦横無尽に駆け巡り、大隊を単騎で壊滅させたという記録が非公式ながら残されている。
「俺の獣爪、いつまで防ぎきれるかな?」
「その程度で粋がってもらっては困る」
スカラの速力も驚異的だが、攻撃速度ではダミアンの方に分がある。ダミアンは床面を勢いよく蹴って加速し、スカラ目掛けて強烈に刀身を薙ぐ。回避な間に合わないと判断したスカラは左手を
「
「何?」
薙いだ瞬間、目にも留まらぬ神速で上方へ切り上げる強烈な二連撃。二発目の圧を抑えきれずノーガチの刀身は弾き上げられた。がら空きとなった懐を、ダミアンは決して見逃さない。
「
「ぐっ……野郎」
刀身での三撃目は間に合わない。ダミアンは空いた左手で鞘を振り抜き、スカラの右側面目掛けて強烈に
「舐めるな!」
「むっ――」
「……手間掛けさせやがって。これで終いだ!」
ダミアンが動かなくなったところで左手を離す。右の肋骨を損傷した影響で右腕が上手く使えず、スカラは左の逆手に持ち替えたノーガチを振り上げた。表情に慢心はなく、危険な相手を一刻も早く始末せねばならないという危機感に駆られている。
「ダミアン様!」
振り下ろされた刀身がダミアンの胸部へと迫る。ノーガチの効果は刺突でも発動する。三列の斬撃に刺し貫かれば致命傷は免れない。
「……叫ばずとも起きている」
「お前……」
薄目を空けたダミアンが体を右方向へ回転させ、切っ先の軌道から外れる。
「くそがあああああ――」
「
頭部と脇腹の負傷を感じさせぬ神速でダミアンがスカラの背後を取った瞬間、激情に
「人の形をした獣とて、首を失えばそれまでだ」
素早く血払いし乱時雨を納刀。
敗北を理解しきれぬ凶悪な面構えが血だまりに落下すると同時に、噴水と化した屈強な肉体は膝から崩れ落ちた。
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