第38話 あなたの味方
「ハァハァ」
全力で走る少女が一人。
未だ平和な街並み。楽しそうに話す人達。
「お兄様。美鈴……何処にいるのですか」
走り続けている内に疲れて足が竦み膝に手を置き息を整える。
「ハァハァ、こんなところで……」
ふと前を見ると二人の探していた人物が目に入り、強張った両足を動かし向かいはじめ。
「お兄様! 美鈴!」
呼び止めては心臓の鼓動が大きく聞こえる胸に手を置く。
「あ、やっと見つけたよクル」
声がして後ろを向くと慌てたようすで走ってきていた。
「走ったら危ないぞー」
ボクがそう言った後にクルは転けかけ。倒れる寸前に如何にか阻止は出来た。
「危ないな大丈夫?」
「お兄様……はぁ」
慌てた様子で息を荒げている。
「どうしたそんなに慌てて」
「…お姉様が。お姉様が危なくて! それでそれで」
「一旦落ち着いて。物事を整理するときは落ち着きが大事だよ」
深呼吸をさせ話を続けてもらう。
「王都の外で魔物退治をしていたら人の集団が。……それで兵士を呼んできてってお姉様に言われて……」
クルが慌てていた理由を知ったボクは返事をし近くの兵士の元へ走っていった。
「魔力はそこそこ足りるかしら。でもここで食い止めないと。みんなの為に」
その時。気づけば辺りが暗く何をもいわぬ静けさに包まれていた。
いつしか敵に向かって構えていたはずの手を下ろす。妙な脱力感がアルミスを襲う。
「どうなっているの……?」
「裏切られた割には王国を守ろうとするのね」
声の方、前を見ればそこには自分が立ち塞がっていた。
「あなたは。どうして、私が」
「無意味に頑張って王国を守ったところで。結局はあのような惨劇が繰り返されるだけ」
脳裏に焼き付いた母の眼。親しげに接してくれた王やみんなを思い出す。
「……だからこそ守らないと。無意味だとしても私を助けてくれた人がこの国には居るのよ」
「バカの一つ覚えね。身近な大切なものより大衆を選ぶなんて」
「私は。クルも美鈴も壱曁も守る。そして、こんな私を気にかけてくれた王の国を守るわ!」
「守りたいものは多すぎるとどれか落とすもの」
戦闘体勢に入るもう一人のアルミス。
「私怨に呑まれるといい」
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