トムテ③
さて、トムテさんが子どもたちにプレゼントが配る時期になると、それぞれの家庭ではミルク粥をテーブルに備えておく習慣がこの集落にはあります。
「トムテさんが大好きなんですよ」
そう教えてもらったものの、それはもう不思議に感じました。
地域の愛されおじさんの為にミルク粥を用意しておくだなんて、訳がわからないじゃないですか。
わ、わからないですよね?
ミルク粥のこともそうでしたが、トムテさんという気のいいおじさんのことも不思議でたまりませんでした。
大柄で柔和なトムテさん。
みんなに愛されるトムテさん。
いまの時期は当たり前のように集落に姿を見せていますが、この寒い時期以外に彼を見かけることはありません。
それでも集落のみなさんは当たり前のように彼に接していて、そして子どもたちも当たり前のように物をねだります。
普通に考えれば、そんなのは非常識です。
娯楽というものが貴重になってしまったこの時代に、あれも欲しい、これも欲しいと、子どもたちの思いのままにお願いされるというのは、それだけで大変なことなのですから。
さすがに変だと思いますよね。
ですから、わたしも役場のかたにトムテさんのことを尋ねました。
そしたら案の定といいますか、集落のみなさんも彼が普通のヒトではないことは察していたようです。
ただ、彼の正体については誰も気にしていませんでした。
曰く、
「一緒に子どもたちを見守ってくれる仲間だからね」
素敵です。
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