第10話 もう一度
俺は、森田家の玄関に居た。
由紀と話をするためだ。
いつもは部活が終わった後、保や日岡さんと寄り道をしたり、話をしながらノンビリ帰宅するんだけど、今日は先に一人で帰ってきた。
[ピンポーン]
『はい』
「あ、和志です。由紀に会いたいんですが、体調いくらか良くなりましか?」
『えっ!和君?ちょ ちょっと待ってて!』
「え?由紀?」
おばさんかと思って話していたけど、由紀本人だったみたいだ。
少し待つと慌てて着替えたのか、普段はあまり見ない様なラフな服装の由紀が出てきた。
「由紀」
「か 和君・・・」
数日ぶりに会う由紀は体調不良のせいかもしれないけど少しやつれて見えた。
普段が、明るく元気なキャラだけに余計に辛く見える。
いや。それだけじゃないのか? 俺を見て何だか泣きそうな顔をしている。
「和君・・・ごめんなさい」
「え?」
「彼氏が出来たって言ったこと・・・」
何で由紀が俺に謝るんだ?
吉野と付き合ったのは・・・由紀が俺の事を彼氏だと思っていなかったからだし、謝る必要はないと思うけど。
「全部嘘だったの・・・ごめんなさい」
「嘘?嘘ってどういうこと?」
「・・・吉野君に頼んで彼氏役をしてもらったの」
何で?どういうことだ?なんでそんなことをする必要が?
俺への嫌がらせだったってことか?
「なんでそんな事したんだ?俺が何かしたってのか?」
急な展開に思わず声を荒げてしまった。
「ひっ ご ごめんなさい
和君が・・・夏川さんと仲良さそうに買い物をしてるの見て・・・
夏川さんと付き合ってるんだと思っちゃって・・・
私に彼氏が出来たって言えばやきもち妬いてくれるかなって・・・」
「そんな・・・・・俺がどんな思いだったと・・・」
「ごめんなさい・・・」
でも、それって由紀が夏川さんに嫉妬してたって事か?
だとすると由紀も俺の事が好き?
だとしても・・・
「なぁ由紀。もし俺の事が好きで彼氏だと思ってくれてたんなら、なんで直接俺に夏川さんの事を聞いてくれなかったんだ?
だいたい、夏川さんは彼女とかじゃない。ただの友達だ。」
「うん。吉野君が調べてくれて・・・後から私の勘違いだったってわかった」
「そんなに俺の事が信用できなかったのか?」
「そ そんなこと ない・・・・」
由紀の声は更に小さくか細いものになっていた。でも、俺の気持ちも収まらなかった。
「・・・・由紀が彼氏を作ったって聞いたとき凄く悲しかったんだ。
俺は由紀の彼氏だって思ってたけど、由紀にとっては友達くらいにしか思われてなかったのかなってな。
今思うと俺も物心ついてから由紀に好きだとか付き合ってくれって言ったことなかったと思うんだ。
だから、由紀は俺と付き合ってるとは思わずに彼氏を作りたかったんだなって思ったんだ。
それに・・・俺は色々と由紀にしてきたと思うけど、由紀からは恋人らしいこともしてもらったことがないと思う。俺が何でもやってしまうからかもしれないけど・・・って今更だけどな」
「いつも・・・一緒だったもんね。
和君は私が困ってるといつも助けてくれた。私は一緒に居て、和君が色々助けてくれるのが当たり前の様に思ってしまってたんだと思う・・・
でも、当たり前の事なんかじゃないよね。そういうのって・・・
和君は私の事を思ってくれていたんだもんね。それなのに私・・・」
幼馴染にも色々な形があると思うけど、俺達の場合は、もしかしたら距離が近すぎてお互いの関係が分からなくなってたのかもしれないな・・・
「今も・・・もちろん由紀の事が好きだって気持ちはある。
ただ・・・今の話を聞くと正直気持ちの整理がつかない」
「そう だよね・・・・こんな女の子嫌いになるよね」
「嫌い・・・ではない。
ただ、今までみたいな関係にすぐには戻れないと思う」
「うん・・・・・」
「だからさ、もう一度やり直してみないか?友達として。」
「え?」
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「由紀!!」
「お姉ちゃん・・・」
綾女さんに吉野。
そうか吉野は由紀じゃなくて、本当は綾女さんと付き合ってたんだな。
だから彼氏役を。
「和志君に謝ったの?」
「うん・・・全部話した」
「和志君。私が由紀に変な事言わなければ和志君につらい思いをさせることもなかったの。本当にごめんなさい」
「藤原 すまなかった。
俺がもっと上手く立ち回るか、お前に早く本当の事を話してれば・・・」
確かに2人も俺からすれば由紀と同罪だ。
でも、2人は由紀のために動いたんだよな。
それに二人も昔から知ってる友人だし、何だか憎めないんだよな・・・
「いいよ。由紀と色々話したし、もう終わったことだ」
「終わったって・・・じゃぁ森田とは・・・」
「ああ。前みたいな関係には戻れない」
「そ そうか・・・・」
「俺も由紀もいつも一緒で幼馴染として距離が近すぎたんだと思うんだ。
今回の件、最初に話を聞いたとき凄くショックだった。
その日は自分の中で気持ちの整理をつけたつもりだったけど、日が経つにつれて余計に由紀の事で頭がいっぱいになってきた。俺も思った以上に由紀ばっかり見てたってことだよな。
ただな、それでも由紀が幸せになるならって俺は身を引くつもりだった。
だけど、、保や日岡さんから"お前の気持ちはどうなんだよ"って言われたんだ。それに横田にも後押しされて、今日由紀に会いに来ることが出来た。
本当。来てよかったよ思ってるよ。あいつらに感謝だな」
「藤原・・・・」
「さっき由紀と話したんだ。
元の関係には戻れないけど、俺達はもう一度友達からやり直すことにしたんだ」
「友達から?」
「そうだ。さっきも言った通り俺達は幼馴染としての距離感が近すぎたんだ。だから一旦距離を取って友達関係に戻るんだ。
そして、それでもお互いを好きでいられたら・・・
俺は由紀に告白するつもりだ」
「和君・・・」
「というわけだ。
由紀。俺はお前が俺に愛想をつかして他の彼氏が出来ないように、そして俺に惚れてもらえるよう頑張るつもりだ」
「わ 私は和君以外の人を好きになんてならないよ・・・・
で でも、私も和君に好きになって貰えるように頑張るから!」
「よろしくな由紀」
「うん。和君。これからもよろしくね」
一度終わったと思った俺の初恋だったけど、こういうのもきっとありだよな。
だってもう一度由紀と恋が出来るんだもんな。
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あとがき
ここまでお読みいただきありがとうございます。
後1話だけ書いて1章終了となります。もう少々お付き合いくださいませ。
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